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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<192>高松大学
「実践教育」で職業人を養成
2学部で少人数教育   研究室制度で切磋琢磨

対話で学ぶ知識と技術、現場で培う実践力、社会が求める人間力を身に付ける。高松大学(佃 昌道学長、香川県高松市)は、1996年に経営学部産業経営学科で開学したフレッシュで小さな大学。現在、経営学部と発達科学部の2学部で、ともに企業や教育現場での実践教育に傾注する。少人数制教育で知識と技術を修得し、実習やインターンシップを通して教員としての教育実践力や企業での組織運営力などを身に付ける。ゼミナールに似た「研究室制度」を設け、学生はいずれかの研究室に所属。研究室は、教員と学生とが学問研究を通じて切磋琢磨する場で、学生としての生活の本拠地になっている。学生一人ひとりへの手厚いサポートによる就職力の強さを誇る。「未来を開く教養と専門性を備えた幅広い職業人の養成をはかり、地域社会に貢献できる大学をめざしたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

対話にみちみちた人間教育

4ヶ条からなる「建学の精神」がユニークである。「対話にみちみちたゆたかな人間教育をめざす大学 自分で考え、自分で行なえる人間づくりをめざす大学 個性をのばし、ルールが守れる人間づくりをめざす大学理論と実践との接点を開拓する大学」

学長の佃が説明する。「建学の精神のひとつに『対話にみちみちたゆたかな人間教育をめざす大学』とあります。対話は双方向の会話であり、その糸口は『気づき』です。気づきがあって初めて人は会話を始めます。気づきを得る学びとして、本学では『実践の場』を用意。実習やインターンシップ、地域活動など、五感を通して得られる気づきに満ちた学びのなかに、学問の府としての豊かさがあると考えています」

こう続けた。「本学は学生、保護者、教職員が三位一体となって学生の成長を考えようとしています。親子間に教職員の言葉が介在することで、学生に『気づき』が芽生え、対話が生まれ、将来を主体的に構築していく基盤が創造されます」

高松大学は、1968年に開園した高松東幼稚園が淵源となっている。「幼児教育の専門家の先生たちが、まず幼稚園をつくり、そのあと幼稚園の先生を養成するため短大をつくり、4年制大学へと発展しました」

1969年、高松短期大学(児童教育学科)が開学。「女性の社会進出が盛んになり、本県でも保育園、幼稚園の必要性が高まりました。実験的に幼稚園を経営していたこともあってオリジナリティーのある短大です」。76年、音楽科を、83年、秘書科を設置した。

96年、高松大学(経営学部産業経営学科)が開学。「阪神淡路大震災のあと、地域経済にかげりが出て大学設置の声が高まり、県や市の応援もあって産業経営を柱に設立。社会人を受け入れる必要があると昼夜開講でスタートしました」

2000年、経営学部マネジメントシステム学科を開設。02年、留学生別科を開設。03年、産業経営学科を経営学科と改称。06年、発達科学部(子ども発達学科)を開設した。

「子どもの発達を見るというのがベースにあり、短大より高度で、座学よりも実践や自習を重視するなど時代にマッチした教育で幼稚園・保育所と小学校、特別支援学校の教員を養成します。オンリーワンの教育をめざしました」

現在、2学部に569人の学生が学ぶ。出身地は、香川県が7割で中四国が大半を占める。男女比は、経営学部は男子が、発達科学部は女子が多いが、全体では男子51%、女子49%とほぼ男女同数。

学部の学び。経営学部は、教育方針の1つに「地域に貢献できる職業人育成」がある。講義の中でもインターンシップに重点をおく。「1年生には『職業とは、企業人とは』といった概念を持たせ、2年生にはグループで企業に派遣してインターンシップ教育を実施。3年生は本人の進路希望も考慮した企業でのインターンシップを行っています」

発達科学部は、子どもの教育・保育にあたるための「理論」と「実践力」、そして豊かな心と創造力を身に付けた人材を育成。「乳幼児から学童期における子育てにかかわる問題を総合的に学習。保育士、幼稚園教諭、小学校教諭、特別支援学校教諭など多様な免許・資格の取得をめざし、教員採用試験対策の授業を段階的に開講しています」

とくに、教育実践演習に力を入れる。「学生が中心となってげんき村という仮想空間をつくって大学祭などで披露、村長役の学生も登場します。また、学内にビオトープをつくって水辺の動植物を育て夏にはホタルが飛び交います。地域の子どもたちに自然体験させることで豊かな心を育みます」

研究室制度は、入学から卒業まできめ細かな少人数制で学生を支える。「研究室は専任教員によるゼミナールと卒業論文および生活指導、学生相互の学修および人格形成、心のコミュニティを確保するという3つの場になります。コミュニケーション能力や論理的思考力を養います」

学生のボランティアには、実践教育と繋がる活動もある。「読み聞かせ隊」がそれだ。「学生たちが、地域の小学校などを訪問、子ども向けの本を読んで聞かせる活動を行っています。本を読み聞かせることは、社会人基礎力に欠かせません」

就職の強さは、ゼミナールの先生方を中心とした学生一人ひとりへの手厚いサポートにある。2017年3月卒業生の就職率は、99.0%。就職先は、四国の中心都市、高松市を抱える香川県内が79.4%を占める。

「就職活動を円滑に進めるため3年生から就職ガイダンス・セミナー、企業説明会などを実施。教員は授業やゼミナールを通して客観的に学生のパーソナリティをとらえ、一人ひとりをサポートします」

キャリア支援課は地域企業や地元幼稚園・保育所と信頼関係を築き、職場の雰囲気や労働条件などを詳細に把握。「地元の銀行トップや日銀支店長らを呼んで総合科目を開催、学生は地域経済を知り、講師の先生方も現代学生気質を知ることが出来ると好評です」

地域連携も積極的だ。学科やゼミナール、クラブ活動などさまざまなグループで、地域と関わる連携プログラムを積極的に導入。「高松市や東かがわ市と連携協定も締結。学外で地域の人と一緒に活動することで、机上だけでは得られない、大きな『何か』を学び取っています」

クラブ・サークル活動も活発。ハンドボール部は2017年度現在で12回の全国大会出場、中四国学生ハンドボール選手権Ⅰ部で23回の優勝を数える。「男子バレーボール、女子バレーボール、サッカー部も香川・四国エリアで好成績を収めています」

大学のこれから。「香川県は教育に対する意識の高い県であり、なかでも高松市は四国経済の中核都市です。そこに位置する本学は、地域に根ざし、地域に貢献するという視点で実践教育を行ってきました。建学の精神を具現化するため、正課はもとより正課外においても学ぶことのできる教育環境を整え、教養と専門性を備えた幅広い職業人を育てていきたい」

具体的には?「地域の大学で学び、質の高い教育を施し、しっかりとした学生をつくり、地元に職を得て結婚し、子どもを母校に入れて...という循環をつくりたい。それは、学習し、さまざまな体験をし、教員・仲間と感動を共にすることで、学生の満足度を高めることです。これからも、この歯車を学生中心に回していきたい」

「地域貢献」に力を込めて結んだ。「人間の無限の可能性を信じて、教育に果敢に挑戦する熱意の醸成をはかり、地域社会に貢献できる大学をめざします」