特集・連載
大学は往く 新しい学園像を求めて
<184>文化学園大学
未来の文化を創造する人材育成
グループ4校1400人の留学生 世界水準の教育を施す
ファッション・デザイン・教養を学び、未来の文化をつくる人材を育てる。文化学園大学(濱田勝宏学長、東京都渋谷区)の淵源は、文化服装学院だが、現在、服装学部・造形学部・現代文化学部の3学部と短期大学部全8学科からなるファッションの総合大学になった。創立以来、「新しい美と文化の創造」を建学の精神として、日本のファッション業界をリードしてきた。文化ファッション大学院大学、文化服装学院、文化外国語専門学校を擁する文化学園グループの一員として、多様なニーズに対応した教育を行う。自ら考え、行動する力を身に付けるアクティブラーニングを重視した授業や学生全員でつくり上げる伝統のファッションショーや卒業研究展など授業の枠を越えた学びの舞台が特長。「日本の服装学・造形学・住環境学分野の研究・発展をリードし、社会のグローバリゼーションに対応できる人材を育成したい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)
ファッションの総合大学
キャンパスは、新宿新都心の超高層ビル群にある。最先端のデザインやファッショントレンドが集まる恵まれた環境。文化学園グループ4校で約1400人の留学生が集う国際的都市型キャンパスでもある。
校舎は、21階建ての高層建築で、国内最高の水準を誇る服飾博物館やファッションリソースセンター、Shop D60(模擬店舗型実習室)など充実した施設が学びをサポートする。七月に学長に就任した濱田が抱負を語る。
「大沼 淳先生(文化学園理事長)が、学長を48年間務められた後の就任なのでプレッシャーはあります。大沼先生が敷かれたレールを踏み外すことなく、少子化という厳しい時代、学生確保など改革をどう進めるか、頭の中を駆け巡っています」
文化学園大学の淵源である婦人子供服裁縫教授所は、1919年、東京・青山に開設。23年、文化裁縫女学校となった。26年、キャンパスは現在地の渋谷区代々木に移る。36年、文化服装学院に校名変更。
戦後の1950年、文化女子短期大学(初代学長に煙山専太郎)が開校。その後、かつて新宿のランドマークだった文化服装学院の円型校舎が完成。64年、文化女子大学が開学。文化女子短期大学は文化女子大学短期大学部となる。
72年、文化女子大学大学院(家政学研究科被服学専攻修士課程)を開設。89年、同大学院家政学研究科に被服環境学専攻博士後期課程を開設。「大沼先生は、早くからファッション分野は研究部門に遅れが見られるのでと大学院設置の必要性を説き、短期間に実現させました」
91年、文化女子大学文学部を小平キャンパスに開設。98年、21階建ての新校舎(A・B・C館)完成。2000年、家政学部を服装学部と造形学部に改組。04年、文学部を現代文化学部に改称。11年、文化学園大学に校名変更。12年、全学部・学科が男女共学となった。
「ファッションやデザインの教育の場ではほとんどの国が男女共学です。現代のグローバル化した社会において国際的な大学間の交流は不可欠ですが、交流をさらに進めるには志ある人材を幅広く教育してゆくことがねらいです」
15年、現代文化学部を新都心キャンパスに移転、大学院・短大も含め全学が集約。「全学部の教育研究資源が集まり、より具体的に現代の社会と文化を見つめたイノベーションを進めることができるようになりました」
現在、3学部に2864人(留学生は322人)、大学院に52人(同34人)、短期大学部に119人(4人)の学生が学ぶ。3学部の男女比は1対9。「留学生は40ヵ国から来ています。多いのは中国ですが、旧ソ連圏などヨーロッパ諸国からも来ています」
教育について語る。「本学の強みは、服飾の素材、デザイン、製作、着心地など管理、ビジネスまでトータルに学べるところにあります。社会との繋がりを活かした学びが目指す職業で活躍するスキルや強みを育みます」
3学部の学び。服装学部は2学科で、服装学全般にわたる総合的かつ体系的な理論を学ぶ。「ファッションクリエイション学科は、社会やアパレルを中心とするファッション産業界で指導的役割を果たす専門的知識と技術を備えた人材を育成。ファッション社会学科は、人文学、社会科学等の幅広い分野の教育研究を通じて、課題探求能力及び創造性に富む人材を育てます」
造形学部は2学科で、生活に関わるモノづくりやデザイン並びに住環境の観点から「造形」をとらえる。「デザイン・造形学科は、感性豊かな教育研究を通じて、専門家並びに社会人として生活の質の向上に貢献できる人材を育成。建築・インテリア学科は、建築・住居・インテリアに関わる快適で豊かな環境づくりへの教育研究を通じて、専門家並びに生活の質の向上に貢献できる社会人を育てます」
現代文化学部は3学科で、人間文化を多様な観点から捉える教育研究を行う。「国際文化・観光学科は、異文化理解の教育研究を通じて、実践的な語学力や国際的なセンスと教養を体得。国際ファッション文化学科は、語学力を身につけ、国際舞台で活躍できる人材を育成。応用健康心理学科は、健康的な生活習慣の教育研究を通じ、心と身体の健康の保持や増進に取り組む人材を育てます」
学生の個性伸ばす指導
学生一人ひとりの個性を伸ばすきめ細かな指導を行う。担任・副担任制度に加え、卒業生の中から選ぶ副手という同大独自の制度がある。「授業は、実習やグループディスカッション、リサーチ、プレゼンテーションを取り入れたアクティブラーニングの科目を数多くそろえ、自分自身で考え、行動する力を育てます」
グローバル化。文化学園グループ4校の約1400人の留学生が日本人学生とともに学ぶ。「国際ファッション工科大学連盟(IFFTI)加盟校との交流をさらに推進し、4校の学生たちが相互に刺激を与え合い、相互に学び合い、さまざまなクリエーションを行っていくのが、本学の学生生活です」
12年、海外インターンシップを行うグローバルファッションマネジメントコースがファッション社会学科に発足。「大学院のグローバルファッション専修では中国の浙江理工大学に続いて、16年からパリの国立高等装飾美術学校(ENSAD)との間でダブルディグリープログラムを開始するなど、世界に通用する特色ある教育の展開をさらに推進しています」
手厚い就職サポート
就職サポートは手厚い。「個別面談や模擬面接等、個々の相談や状況に応じて対応し、学生一人ひとりに具体的にアドバイス。就職活動について前向きに取り組めるよう、就職相談室のスタッフが丁寧にフォローしています」
企業で人事採用経験のあるキャリアアドバイザーが、個別面談や特別講座を実施。ファッション業界を中心に、インテリア、デザイン、旅行、航空業界などの人事担当者を招き、合同企業セミナーや個別企業説明会を開いている。
地域貢献。「大学で学んだ知識や技術を生かし、企業や地域社会との共同プロジェクトに取り組んでいます。地域の教育や文化活動にも大きく貢献しており、実社会で必要とされるコミュニケーションの重要性を学ぶ機会です」
ファッションコンテストで入賞した学生作品が商品化されるなど企業との連携は盛んだ。子どもたちにファッションショーを体験させたり、古民家再生など町おこしに協力するなど独自の地域貢献活動も展開している。
留学生や男子を増やす
大学のこれから。「入口では、社会人の学び直しに工夫を加えたい。また、縦に伸ばすだけでなく横、同世代の留学生、ファッションは女性のものという意識が強いが、男女共同参画の面から男性も増やす必要がある。その点、中国の武漢紡織大学との合作プログラムは有効だと思う。出口では、人材養成分野などで産業界との連携を深めたい」
こう結んだ。「グローバリゼーション、 イノベーション、クリエーションを教育の柱とし、専門的職業教育の一層の質的向上をめざして実践的な教育内容の強化を図り、世界水準の教育を行う特色ある大学として、これからも社会に貢献していきたい」。こう語る新学長の目はひときわ輝いていた。