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大学は往く 新しい学園像を求めて

<183>北翔大学
「5つの教育フレームで自立力育む」
職業的技能幅広い教養  新しい社会に自ら貢献

新しい社会に貢献する職業的技能と幅広い教養を身につけた自立した社会人の育成。北翔大学(西村弘行学長、北海道江別市)は、1939年創設の北海道ドレスメーカー女学園が淵源だ。北海道女子短期大学、北海道女子大学と校名を変え、2000年に4年制大学となり、07年に現在の北翔大学の校名になった。14年に生涯スポーツ学部と教育文化学部の2学部5学科という、「新しいかたち」に再編した。スポーツ・健康福祉・教育・芸術・心理を学び、「生き抜く力」を育む。「5つの教育フレーム」による教養から就業力まで磨く実学教育や教員養成など資格取得を重視した就職力が特長。「教育と学生支援の両輪で、現代人にふさわしい専門的実践能力を身につけた人材育成をめざしています」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

「愛と和と英知」が教育理念

北翔大学の前身である北海道ドレスメーカー女学園は、1939年に浅井淑子が創設。「『愛と和』を教育の理念に掲げて開学しました。これを母体に北海道女子短期大学、北海道女子大学、北翔大学が誕生しました」

63年、札幌市に北海道女子短期大学(被服科)が開学。66年、同短期大学に工芸美術科、体育科を設置。江別市の現在地に移転。69年、初等教育学科、専攻科体育専攻、80年、専攻科初等教育専攻、87年、経営情報学科を開設

97年、人間福祉学部(介護福祉学科、生活福祉学科)の1学部で北海道女子大学が開学。北海道女子短期大学を北海道女子大学短期大学部に校名変更。

2000年、北海道浅井学園大学、北海道浅井学園大学短期大学部に校名を変更。大学に生涯学習システム学部(健康プランニング学科、芸術メディア学科)を設置、男女共学となる。

05年、北海道浅井学園大学を浅井学園大学に、北海道浅井学園大学短期大学を浅井学園大学短期大学部に校名変更。07年、北翔大学、北翔大学短期大学部と校名を変更した。その理由を語る。

「北の大地に根を下ろし、飛翔する精神力と行動力をもって社会に貢献できる人材の育成と北方圏の他地域との交流を通じ、国際社会の一員として世界に羽ばたく人材の輩出という理念をもとに北翔大学に変更しました」

09年、北翔大学に生涯スポーツ学部を開設。14年、北翔大学は生涯スポーツ学部(スポーツ教育学科、健康福祉学科)と教育文化学部(教育学科、芸術学科、心理カウンセリング学科)の2学部5学科に再編した。

現在、2学部に1749人の学生が学ぶ。男女比は男子6、女子4。出身地は、道内が大半で札幌市が60%を占める。短期大学部は320人で女子が圧倒的。

学長の西村が大学を語る。「『愛と和と英知』を教育理念に掲げ、創設以来、世界に羽ばたき、あるいは地元に根を下ろし、人と結びあい、社会とつながり、絆を紡ぐ人材を育成してきました。卒業生は、『自立とは、人が社会と共にあることの認識と行動であること』を体得、有為な社会人として活躍しています」

2014年に「新しいかたち」に再編した2学部5学科の学び。「時代と社会の要請に応えるのがねらいです。これまでの教育資源を生かし、発展させ、地域社会の活性化と社会の変化に柔軟に対応できる幅広い教養と深い専門性を有する人材を育成することになりました」

生涯スポーツ学部に新設の健康福祉学科は、健康長寿社会の実現という、超高齢社会の要請に即応する。「これまでの人間福祉学部の実績を基に、介護福祉分野と健康・スポーツ分野を統合。介護予防およびケアマネジメントの知識とスキルの修得を可能にし、福祉職の養成をめざしています」

スポーツ教育学科には、新たに競技スポーツコースを加え、生涯スポーツ社会の発展に寄与することになった。

教育文化学部の教育学科は、「教員養成で実績のある学習コーチング学科の幼稚園、小学校、特別支援学校の教員養成課程に保育士養成を加え、伝統の養護教諭と中高の音楽教諭の養成課程を含めて4コース制にしました」

芸術学科は、伝統的な美術・工芸分野から現代的なデジタルアートまでの多様な学びがある。心理カウンセリング学科は、心理臨床に加えて精神保健福祉士養成課程を設置し、現代人の「こころの課題」に取り組む。

「新しいかたち」を支えるのが「5つの教育フレーム」と「支援フレーム」。「入学前学習支援に始まり、基礎・教養科目、専門科目、他領域の専門科目を選択履修する発展科目、入学時から卒業次までを貫く就業力養成科目など五つの教育フレームを、丁寧な履修指導によって、社会人として自立できる力を養います」

これを、「支援フレーム」と呼ぶアドミッション、地域連携、キャリア支援、教育支援総合、教職の5つのセンターが連携して支援。「入学前から卒業後まで一貫して持続的なサポートを受けながら、個々の目標に向かって進むことができます」

就職力。平成28年度卒業生の就職率は98.8%。「キャリア支援センターの専門スタッフが親身な指導を行っています。特に、業務の一端に触れながら社会、仕事、組織を体験するインターンシップに力を入れています」

教員・保育士を数多く輩出してきた。平成29年度の教員採用候補者選考検査登録者数(小中高、特別支援学校、養護教諭の採用)は98人。「教職センターが、教育実習や免許取得、教員採用試験対策まできめ細かくサポートしています」

地域貢献に力を入れる。北海道の活性化に向けて、今年5月に北海道と包括連携協定を締結。「連携・協力の取組分野は、スポーツ教室などの地域でのスポーツの普及啓発活動、思春期・青年期の子育て支援、道内の児童生徒の学力向上に係る協力活動など多岐にわたっています」

大学スポーツも活発。女子の陸上競技部が強化され、ここ数年は全日本大学女子駅伝対校選手権大会の常連校となっている。「女子バレーボール部、剣道部、硬式テニス部など体育会系サークルの活動が盛んです」

ユニークなのは、生涯スポーツ学部の山本敬三教授。今年度の北海道科学技術奨励賞を受賞。「山本先生は、スキージャンプの力学的な研究を行い、葛西紀明選手や高梨沙羅選手ら日本の代表的ジャンパーの競技力向上に貢献したのが認められました」

学長が学食メニュー

ところで、学長の西村は、名古屋大学大学院農学研究科修士課程修了の農学博士。北海道大学農学部助教授。北海道東海大学工学部教授を経て同大学長。『香辛料成分の食品機能』、『行者ニンニクの凄い薬効』、『北の健康野菜』などの著書があり、健康と食品に精通している。

「学長が推薦する健康メニュー」を学生食堂やオープンキャンパスで食べることができる。ある日のメニューは、「チコリーとシーフードのクリーム煮」。「チコリーと玉ねぎは抗酸化作用と血圧上昇抑制効果で動脈硬化の予防に良く、シーフードとベーコンがバランスよくミックスされるので、美味しく健康に良いためお勧めです」と解説も付く。

地域のための大学志向

大学のこれからを聞いた。「我が国では、超高齢化と少子化が急速に進行し、人々の活力をどのように維持し、社会の発展に貢献する人材を育成するかが、高等教育機関である大学に問われています。少子化時代を迎え、学生の確保が課題になります。それには、社会的ニーズに合った教育内容を深めることと、社会に役立つ人材を送り出すことだと思う。地域とともに、地域のための大学をめざしていきたい」

こう結んだ。「一人一人が人間として幅広い教養を身につけ、自立的な社会人を育成していくことが求められています。時代を先取りする精神性を現在に生かし、新たな共生社会の創造をめざす人材を育てていきたい」