加盟大学専用サイト

特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<181>北星学園大学
地域・社会・世界に開かれた大学
広い教養深い専門  独立した人格持つ学生育成

キリスト教(プロテスタンティズム)が教育理念である。北星学園大学(田村信一学長、札幌市厚別区)の前身は、アメリカの女性宣教師サラ・C・スミスが1889年に設立したスミス女学校。北星学園大学は、1962年、文学部1学部で開学、現在、文学部・経済学部・社会福祉学部の3学部8学科からなる文系総合大学に発展した。建学の精神は、「キリスト教による人格教育を基礎とし、広く教養を培うとともに、深く専門の学芸を教授研究、知的、応用的能力を発揮させる」ことを目的としている。北海道内私立大学の国際交流の先駆者として、交換留学制度などグローバルでアクティブな学びを実現。「開学以来、地域・社会・世界に開かれた大学を目標としています。しなやかな精神的骨格を持った、個性ある大学として、時流や利害に流されない独立した人格を学生のうちに育てたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

キリスト教精神が教育理念

札幌市の木であるライラックが「校花」である。ロゴマークもこれをデザインしたものだ。校歌にもライラックが出てくる。ライラックは、創立者であるスミスが1890年に故郷のニューヨーク州エルマイラから札幌に持ち込んだ。

母樹は北海道大学の植物園にある。キャンパスに咲くライラックの多くは、その子孫から接木され育てられた。学長の田村が説明する。

「本学で学ぶすべての学生たちが、このライラックのように、創設者の精神を受け継いで深く大地に根付き、美しい花を咲かせて社会に貢献する存在となることを願っています」

北星学園大学の前身であるスミス女学校は、1894年、北星女学校と校名を変更。「北星」への改称に際しては、役員だった新渡戸稲造が重要な役割を果たしたと言われている。

「『武士道』の著者である新渡戸は、その後、国際連盟事務次長を務め、世界平和のために尽力しました。当時の男尊女卑の風潮にあって、女性の人格教育を強調し、北星の教育に大きな影響を与えました」

戦後の1951年、北星学園女子短期大学(英文科)が開学。54年、同短大に家政科を増設(2002年に生活創造学科に改称)。

北星学園大学は、1962年、文学部に英文学科、社会福祉学科を設置して開学。65年、経済学部(経済学科)を開設し、87年に経済学部に経営情報学科を増設。92年、大学院文学研究科を設置、96年に社会福祉学部(福祉計画学科、福祉臨床学科、福祉心理学科)を開設。2000年に大学院社会福祉学研究科、01年、経済学研究科を設置。

2002年、北星学園女子短期大学を北星学園大学短期大学部に改称し、大学の文学部に心理・応用コミュニケーション学科、経済学部に経済法学科を増設。

田村が大学を語る。「教育の根本は、キリスト教に基づく人格教育であり、豊かな教養と広い国際的視野をもち、自立した社会人を育成しようとする教育によって、各分野で活躍する有為な人材を社会に送り出すことができたのです」。

2004年、「スミス・ミッションセンター」を設置。チャペルタイム(大学礼拝)を中心に、さまざまな活動を行っている。キリスト教学や創立者のスミスの働きなどを学ぶ「北星学」などの授業もある。

現在、3学部に3876人の学生が学ぶ。出身地は、道内が98%で、札幌市内が60%。男女比は、ほぼ半々だ。短期大学部は261人で、女性が圧倒的。

3学部の学び。文学部は、英文学科と心理・応用コミュニケーション学科の2学科。英文学科は大学開学時に設置、これまでに英語教員らを多数輩出。「2学科に共通するのは、言語とコミュニケーションの重視。言葉を通して多様な人間を理解し、多くの人と適切なかかわりを持つことができるような人材を育てています」

経済学部は3学科、経済学部の専門教育と語学等の大学共通科目との融合により柔軟な勉学を施す。「英語教育に代表される国際性に富んだ北星学園の一翼を担い、国際感覚を身につける為の種々な教育展開を行なってきました。道内を中心とした民間企業や国家・地方公務員などに人材を輩出してきました」

社会福祉学部は、福祉計画学科、福祉臨床学科、福祉心理学科の3学科で、「人々の支援」がキーワード。社会福祉学や心理学領域で学ぶことができる知識や実践力を磨く。「卒業後は、社会福祉分野はもちろん、医療分野・一般企業、公務員・教員など、大学での専門的な勉学の成果を生かし、多様な分野で活躍しています」

学びの特徴に副専攻制度がある。専門課程に加え、さらなる学びで知識の幅を広げる。「リベラルアーツ系の人間科学、宗教と文化、英語、ドイツ語など14専攻分野を用意。副専攻でフランス語を履修した学生がフランス語コンテストで入賞しました」

"学び"と"出会い"の場が「ラーニング・コモンズ」。「多種多様な学習スタイルに合うように考えられた六エリアがあり、グループワーク、創作活動、プレゼンテーションなどの学習を行っています」

学生支援の一環として、一昨年度から自宅外通学支援奨学金制度(入学前予約型)を設けた。「経済的な理由で一人暮らしをすることが困難な、北星で学びたい優秀な学生が対象で月額3万円を支給します。現在88人の学生が受給しています」

創立者が米国出身の宣教師ということもあり、グローバル化に傾注する。異文化理解の促進や言語能力の向上を目的とするさまざまなプログラムを展開。「国際ラウンジ」は、留学生と在学生の交流スペースで、カフェが併設されている。

海外提携校は9か国・地域の16大学。「学科を問わず、1年間または1学期間の留学制度があり、1年間の留学期間中に修得した単位は、本学の単位として認められます」

海外協定校からの留学生も、アメリカ、イギリス、カナダ、スイス、スペイン、インドネシア、中国・韓国・台湾から毎年約60人の留学生を受け入れている。これまでに派遣・受け入れした留学生は2000人を超えた。

「異文化との橋渡しをしようとする国際交流の展開は、通訳ボランティアや阪神・淡路大震災や東日本大震災のボランティア派遣などに継承されています」

就職率は、97%。「就職先は、札幌にある企業が多い。本学の学生は、キリスト教の学びにより真面目で、すぐに辞めないと企業の受けがいいです。就職支援課の12人の担当がマンツーマンで指導・支援しています」

キャリア支援は、計画的に実施。「1年次は、キャリア教育科目があり、2年次では大学生活を含めた自分の将来や『働くこと』の価値観を学び、3・4年次では、企業経営者の話を聞くなどのキャリアデザインプログラムがあります」

社会・地域貢献では、学生も奮闘する。歌志内市との連携では、社会福祉学部福祉計画学科の学生が高齢者アンケート調査などを行い、地域福祉の推進に向けて提案。道内の小学校をはじめ、近隣地域の小学校に受け入れ留学生を派遣し、文化交流を行っている。

大学のこれから。「高き教養と人格の確立をめざした本学の教育は、社会の高い評価を得ています。これからは、AIなどの発達で、地方の大学の役割も変わってくると思う。かつては、経済発展に役立つ人材が求められたが、これからは大学の持つ文化芸術といった側面も重視される。専門教育も大事だが、リベラルアーツを厚くして、多様な教育、体験を積ませ、社会に送り出したい」

こう結んだ。「北星を支えるキリスト教精神は、人間としての基本的なあり方と姿勢を問い続けることで、自らの生き方を探し、実践していくことを大切にします。これからも、知性と豊かな人間性を備え、地域社会の問題にも深い関心を持ち、その発展と問題解決に関わりながら人々とともに歩んでいきたい」