加盟大学専用サイト

特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<172>青森中央学院大学
「実学教育」で地域に人材輩出
地域と共に歩む大学 グローバル化にも尽力

「愛あれ、知恵あれ、真実あれ」が建学の精神である。青森中央学院大学(花田勝美学長、青森市横内)は、1998年、全国唯一の経営法学部を擁する大学として開学、高度な職業人を育成してきた。母体である青森田中学園は、70年を超える歴史があり、教育理念である「実学教育」を実践、豊かな人間性・高い倫理性を基に、幅広い教養と高い専門的能力を備えた人材を地域社会に輩出。2013年に、新たに看護学部を開設、前身の青森中央短期大学看護学科のこれまでの実績を踏まえて優れた看護師、保健師を養成。①1年次から段階的なキャリア支援を実施し、資格取得をサポートする就職力②海外での異文化コミュニケーションを図った真の国際性を身につける留学制度―が特長。「地域産業振興への貢献や健康・医療・福祉の充実を果たし、地域に開かれ、地域と共に歩む大学創りを目指す」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

建学の精神 「愛あれ、知恵あれ、真実あれ」

八甲田山系のすそ野に広がる自然豊かなキャンパス。大学教育にふさわしい恵まれた教育環境が整っている。
青森中央学院大学は、1946年創設の学校法人青森田中学園が淵源である。同学園は、青森珠算簿記学院(現青森中央経理専門学校)と青森裁縫学院(現青森中央文化専門学校)を設立した。学長の花田が創立者を語る。
「創立者の久保 豊前理事長と久保ちゑ前学園長が、設立した当時は、第2次世界大戦後の混乱期で、青森市も焼け野原でした。住む家もない中で、どのように家族を養い、未来に希望を持って生きていくかに国民が憂慮した時代でした。
そうしたなか、先ずは手に職を付けて生活の自立をはかること、貧しいながらも豊かな心を育んでいくことを教育の理念に掲げ、『愛あれ、知恵あれ、真実あれ』を建学の精神として開学。この精神は、今も学園全体に継承されています」
建学の精神を説明した。「『愛あれ』とは、キリスト教のアガペーの愛に、仏道での慈悲に近く、いつくしみ愛する『慈愛』です。『知恵あれ』とは、ものごとの識別に使われる知恵と、それを超える統合的な知恵を含んだ『英知』です。『真実あれ』とは、科学的知識・技術を超えての相対的でなく、絶対的な真理をとらえることを目指しなさいということです」
1970年、青森中央女子短期大学(家政学科)を設置。71年、青森中央女子短期大学附属第一幼稚園を設置。88年、青森中央短期大学に経営情報学科を設置した。
98年、青森中央学院大学(経営法学部)が開学。「経営法学部は、日本に唯一の学部として発足しました。地元の要請もあり、経営学的な視点と法学的な視点を組み合わせながら、実社会で出会う様々な問題に対応する力を養っています」
99年、青森中央短期大学経営情報学科を改組転換。経営法学部に教職課程(中学校社会、高等学校公民)を設置。青森公立大学と単位互換協定を締結。2004年、青森中央学院大学大学院地域マネジメント研究科(修士課程)と青森中央学院大学地域マネジメント研究所を開設。
08年、十和田市と交流協定締結。青森市・十和田市の8大学・短期大学で青森地域大学間連携協定締結。学習支援センターと国際語学サポートセンターが開設。11年、サテライトキャンパス「FRIENDLY WINDOW」を開設。
14年、看護学部を設置した。「県内では看護師が不足しており、地域社会の保健医療福祉に貢献できる人材を養成するのが目的です。経営法学部と同じように、県や市など地域の強いニーズに応えて設置しました」

109人の留学生が学ぶ

現在、2学部に1051人の学生が学ぶ。留学生が多いのが特長だ。「マレーシア、タイなどアジア六ヵ国から109人の留学生が学んでいます。国別ではベトナムからの留学生が45人と最多です」
学部の学び。経営法学部は、法律的な知識・思考と経営的なセンス・スキルをあわせ持つ人材の育成をめざす。13年にカリキュラムを改訂、教育課程での科目編成の共通化を目的とする改編とアクティブラーニング科目を創設した。
「わが国の経済を取り巻く環境は相変わらず厳しく、各方面における国際化を余儀なくされています。企業の経済活動で貢献するだけでなく、高齢化・過疎化を抱える地域社会の諸問題に的確に対応できる人材を育てていきたい」
看護学部は、「新しい学び舎で看護の心と技を探求しましょう」がモットー。建学の精神を具現化すべく、看護職者としての自律性を獲得して、将来、チーム医療の一員として地域医療を支える人材の育成を目指している。
「近年の少子・高齢社会、医療の高度化、生活習慣病の増加等を背景に、活動の場も広がっています。看護職者にはますます豊かな人間性と看護の専門的知識・技術が求められており、そうした看護師を育成したい」
就職力。経済誌が行った「本当に強い大学ランキング2016」で、総合で全国55位、就職力は95.0%で同九位だった。「就職先は地域密着、地元企業への定着を促しており、県内を中心に東北地方が多くなっています」
看護学部は、今年度1期生を送り出す。「1年次から看護師・保健師の国家試験対策のサポート体制は万全です。地域社会の保健医療福祉に貢献できる人材を育て、地域の病院等で定着率を高めていきたい」
グローバル力。アジアの留学生が多いことから、その特色を活かして様々な活動を展開。「留学生がアジアからの観光客と民泊する農家との間の通訳を引き受け、地域の農家の方々に喜ばれています。ベトナム・ハノイで青森県産のリンゴやホタテを使ったメニューを開発、県産食材の魅力を県とともにアピールしました」
「マンゴー・プロジェクト」は、日本人学生と留学生が共同で、タイ産の希少品種「マハチャノック・マンゴー」の輸入、商品管理、販売まで手掛け、3.5トンを完売するなどの人気。「留学生との協働で、グローバル意識を醸成、ひいては地域活性化につながっています」
地域創生では、文科省の平成27年度「地(知)の拠点大学による地域創生推進事業(COC+)」に弘前大学などとともに採択された。「青森県の最大の課題である人口減少の克服のため、地域で生活し、地域で働き、地域創生に取り組む人材の育成と定着を目指しています」

全国一のボウリング部

学生のクラブ・サークル活動。ボウリング部は全国大会で優勝するなど全国的強豪。「スポーツでは、バスケット部やボクシング部が頑張っています。文化系では、『ねぶた囃子方部』が青森ねぶた祭りに参加するだけでなく施設訪問をして囃子を披露しています」
大学のこれからを聞こうとすると、花田は、作家、司馬遼太郎の『街道をゆく―北のまほろば』の話を始めた。同著で、司馬は「津軽も、あるいは南部をふくめた青森県全体が、こんにち考古学者によって縄文時代には、信じがたいほどにゆたかだったと想像されている」と記している。
三内丸山の縄文初中期の広大な遺跡や亀ケ岡で出土した遮光器土偶(縄文後期)の芸術性。司馬は、古代におけるこの地方の豊かさを「まほ(真秀)ろ場」という最上級の場所を意味する古語を使って表現した。
花田の話に戻る。「地方の人口減少、地域経済の低迷がありますが、今、地方大学の存在が改めて注視されています。国を挙げて『地方創生』のスローガンを掲げ、その活性化の原動力として地方大学の果たす役割が期待されているからです」
そして、こう結んだ。「本学は、ヒトを愛し、故郷を愛し、世界に羽ばたける、清新にして気概にあふれる学生を育てています。ここ北のまほろばの地に集う学生たちが、大志を抱きその実現に向けてまい進することを教職員一丸となって支援していきたい」

学生のクラブ・サークル活動。ボウリング部は全国大会で優勝するなど全国的強豪。「スポーツでは、バスケット部やボクシング部が頑張っています。文化系では、『ねぶた囃子方部』が青森ねぶた祭りに参加するだけでなく施設訪問をして囃子を披露しています」大学のこれからを聞こうとすると、花田は、作家、司馬遼太郎の『街道をゆく―北のまほろば』の話を始めた。同著で、司馬は「津軽も、あるいは南部をふくめた青森県全体が、こんにち考古学者によって縄文時代には、信じがたいほどにゆたかだったと想像されている」と記している。三内丸山の縄文初中期の広大な遺跡や亀ケ岡で出土した遮光器土偶(縄文後期)の芸術性。司馬は、古代におけるこの地方の豊かさを「まほ(真秀)ろ場」という最上級の場所を意味する古語を使って表現した。花田の話に戻る。「地方の人口減少、地域経済の低迷がありますが、今、地方大学の存在が改めて注視されています。国を挙げて『地方創生』のスローガンを掲げ、その活性化の原動力として地方大学の果たす役割が期待されているからです」そして、こう結んだ。「本学は、ヒトを愛し、故郷を愛し、世界に羽ばたける、清新にして気概にあふれる学生を育てています。ここ北のまほろばの地に集う学生たちが、大志を抱きその実現に向けてまい進することを教職員一丸となって支援していきたい」