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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<235>浦和大学
ゼミ中心の少人数教育施す
高い就職率 来年度、現代社会学科を新設

 人の心に信頼を育む。浦和大学(久田有学長、埼玉県さいたま市緑区)は、1946年に九里總一郎が開設した私塾が淵源。1987年に開学した浦和短期大学(今の浦和大学短期大学部)を経て、2003年に開学したフレッシュな大学。「実学に勤め徳を養う」という建学の精神を基に、保育・福祉・教育の各分野で、ゼミを中心とした少人数できめ細かな教育を施す。1年次から始まる一人ひとりの個性に対応したキャリアサポートが、高い就職率を達成している。①インターンシップなど実習中心の教育②一般書籍だけでなく絵本など学部に特化した図書情報センター③地域・学外の人との盛んな交流などが特長。2020年度から現代社会学科を新設、学部名称を総合福祉学部から社会学部に変更して新しい一歩を踏み出す。「現在の日本社会で必要とされている知識と技術を学修。多様な社会に対応できるコミュニケーション力がつき、各分野で活躍できる人を育てていきたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

建学の精神 「実学に勤め徳を養う」

 浦和大学の前身である私塾は、1946年、九里總一郎が旧浦和市岸町に創設、珠算・簿記・英語を指導した。49年、浦和実業専門学院を創設。63年、浦和実業学園商業高等学校を旧浦和市文蔵に設置。74年、高等学校に普通科を増設。75年、校名を浦和実業学園高等学校と改称。
 87年、浦和短期大学(経営科、英語科)を旧浦和市大字大崎に開学。97年、福祉科開設。2003年、浦和大学(総合福祉学部総合福祉学科)が開学。浦和短期大学を浦和大学短期大学部に名称変更。
 04年、福祉科介護福祉専攻を介護福祉科に名称変更。07年、こども学部こども学科を開設。17年、こども学部学校教育学科を開設。20年、総合福祉学部を改組、現代社会学科を新設、学部名称を社会学部に変更する。
 現在、総合福祉学部とこども学部の2学部に600人の学生が学ぶ。男女比は、男子4、女子6の比率。出身地は、埼玉が60~70%を占め、東京や千葉など首都圏が大半。
 学部学科の学び。総合福祉学部総合福祉学科は、人の幸せ・健康を支援する、福祉のプロフェッショナルを育てる。入学後の自分の興味や将来の進路に合わせた3コース(福祉・心理、健康スポーツ、ビジネス)が設置され、自由にコースを選んで学べる。 
 4年間、少人数ゼミで教員との対話を通した学びを実践している。1年次から段階的に将来の進路を見据え、福祉の専門家としての力と社会人としての力を養うことができる。
 「社会福祉士の国家試験合格を目指した受験対策講座をはじめ健康運動実践指導者などの資格取得を目指す学生に向けて、充実したサポート体制を整えています。福祉のエキスパートになり、共に幸せになる社会を担える人間に成長してくれることを期待しています」
 こども学部こども学科は、「こどもと育つ」を合言葉に、知識と技術をバランスよく習得し、現場で力を発揮できる保育者を養成。保育士資格、幼稚園教諭一種免許状、認定心理士資格、認定ベビーシッター資格の取得を目指す。
 「少人数のクラスアドバイザー制やゼミ指導、キャリアインターンシップや、保育実習、幼稚園教育実習に全教員がかかわっています。地域の親子が集う『ぽっけ』での実践的授業などもあります」 
 同学校教育学科では、小学校教諭免許状の取得を軸として、21世紀を生きるこどもたちから信頼され愛され、新しい教育課題への対応力を備えた教員を養成。芸術・表現系科目群で豊かな発信力と受信力を養い、英語授業対策にネイティブ講師の英会話講座やハワイ短期留学を導入するなど、学びは多岐にわたる。
 「教育者として広い視野を養うために、近隣の小学校で児童のサポートなどを行う教育インターンシップ、教員採用試験に向け豊富な現場経験を持つ講師陣が行う教師養成の第一人者による指導などバックアップ体制も整っています」
 短期大学部・介護福祉科は、開設以来、現場で活躍できる介護福祉士の育成にこだわり続けている。1年次からの実習など、現場と連携して学習する機会が多いだけではなく、カリキュラムを実習が柱となるように編成している。
 一人ひとりに寄り添い、入学から卒業まできめ細やかな指導を行う。入学金減免、国家試験合格者を対象とした奨励金等、独自の学習奨励金制度がある。
 「理論と実践をつなげる学びを行っています。福祉現場における最新の福祉機器、ロボットの活用に注目・期待が集まる中、介護福祉科では多様な機器を導入し、新しい技術への理解を深めることができます」
 来年度開設する社会学部現代社会学科は、未来への対応力を養う。グローバル化・IT化によってますます多様化・複雑化する社会の動向を的確に見定めて分析し、その課題を読み解き、社会で活躍できる人財の育成を目指す。
 基盤科目・基礎科目で社会学をベースとした幅広い知識・基礎理論を学ぶと同時に、「メディア」「観光・文化」「社会・経営」の3つのフィールドで実践的な専門的知識・理論・技能を習得できるカリキュラムを構成。
 「徹底した少人数教育・ゼミ授業ではコミュニケーション力・文章力が鍛えられ、社会への柔軟な対応力が着実にバージョンアップします」
 就職内定率は、2学部とも100%。実学教育に裏打ちされた、着実なキャリア支援が支える。全学共通の「キャリア形成科目」を配置し、様々な業界での「キャリアインターンシップ」を通じて、ビジネスマナー、サービス接遇、ビジネス文書作成など、実践的な就職指導を行う。
 「就職支援は、一人ひとりを大切に、1年次から『将来』を意識させます。専門分野が福祉・介護・児童関連で、社会福祉の礎を築く意欲のある学生の多くが着実に実績をあげています」
 地域貢献活動は、学科の学びが反映している。週3回、学内に開設される親子のひろば「ぽっけ」がある。「3歳のこどもとその保護者が自由に訪れ、学生たちは授業内容を実践に結びつけることができます。1年次から全員が授業で『ぽっけ』の学びを体験します。空き時間を利用して学生スタッフとして参加することもできます」
 また、「おもちゃコンテスト」を埼玉県などの後援で実施している。「高校生を対象に、こどもたちの夢が膨らみ、こどもたちと一緒に遊べるおもちゃを募集。今年は3回目ですが、多くの応募があります」
 グローバル化にも力を入れる。家族支援先進国のカナダ・トロントのライアソン大学と学術提携。「こども学科では、同大学のコミュニティ・サービス学部こども学科と学術提携し、国際セミナーの開催や共同研究を実施。スタディツアーでは国際的な視点で学習を深めることができます」
 また、同大学を擁する法人の九里学園がハワイに施設を保有しており、傘下の浦和実業学園高校は英語教育で利用している。「大学でも、1週間程度の短期留学に活用して英語力アップに役立てたい」
 大学のこれから。「『実学に勤め徳を養う』を旗印にこれからもやっていきたい。この言葉は、時代が変わっても、どんな分野でも通じると思う。(具体的には?)地域との連携は一層強めていきたい。そして、18歳でないシルバー世代の学びや留学生招致も視野に入れていきたい。来年度から社会福祉に社会学が加わり間口が広がるのはチャンスだと思う」
 こう結んだ。「様々な改革をしながら特色を打ち出して高校の先生や保護者、そして受験生に振り向いてもらえる大学を目指したい」