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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<233>宝塚医療大学
「次世代の医療人」を育成
人間性豊かで 高度な技術と知識を養う

 理学療法士、柔道整復師、鍼灸師のエキスパートを誕生させることが使命。宝塚医療大学(岸野雅方学長、兵庫県宝塚市)は、全国柔整鍼灸協同組合を母体に2011年に開学したフレッシュな大学。保健医療学部の1学部、理学療法、柔道整復、鍼灸の3学科。長年受け継がれてきた伝統医療と科学的根拠を基盤とした西洋医学を理解するとともに、豊かな人間性も身につける。①卒業研究ゼミなどによる少人数教育②専門学校で培ったノウハウを活かした国家資格取得③母体の全国柔整鍼灸協同組合の支援による高い就職率などが特長。系列の平成医療学園専門学校との連携や、教員・学生による独自の地域貢献活動も盛んだ。「本学に迎え入れたいのは、人のために役立ちたいと志し、行動する人です。そうした学生に対し、主体的に学び・考え・行動する個性ある教育を推進していきたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

理学療法、柔道整復、鍼灸3学科

宝塚医療大学は、学校法人・平成医療学園が運営する。2000年に開学した平成柔道整復専門学院が淵源。2001年、平成柔道整復専門学院を平成医療学園専門学校に名称変更。平成医療学園は、横浜医療専門学校、なにわ歯科衛生専門学校を擁し、2019年には、名古屋平成看護医療専門学校を開校した。
 宝塚医療大学は、2011年に1学部3学科で開学。「これからの社会において高齢者も障がい者も健常者と同様の生活ができるようサポートする福祉支援が不可欠。そうした観点から、柔道整復師、はり師・きゅう師とともに理学療法士を育成する3学科構成にしました」
 現在、567人の学生が学ぶ。男子74%、女子26%。出身地は、兵庫53%、大阪26%と近畿圏が大半。四国や信越、中国地方からもいる。
 学長の岸野が教育理念を語る。「本学は、徳義の涵養と人間性尊厳の実践を理念とし、医療人たる社会的責務を自覚せしめ、国際社会に伍して恥じぬ恒心をもつ、有徳の人材を育成するのを目的に開学しました。開学当初から産・学が連携し、社会で必要とされる高度な知識と技術を身に付けた人間性豊かな『次代の医療人』の育成に努めています」
 専門学校との連携などについて続けた。「地域連携・実学・国際性・開放性をコンセプトに学生と教職員が活発にコミュニケーションする校風を大切にしています。平成医療学園専門学校との連携をはじめ、附属治療院や伝統医療文化の発信を通して地域との交流も盛んに行っています」
 伝統医学と西洋医学の融合。「伝統医療は、患者の自然治癒力を期待する側面があります。西洋医学は患者への接し方など同じ面もありますが、解剖学や生理学などは優れており、医療専門職を目指す場合は、両方をマスターしなければなりません」
 3学科の学び。理学療法学科は、リハビリテーション医療に携わる理学療法士を養成。患者の状態を的確に判断する力と、医師の指導のもと最適な治療プランを提案できる、問題解決力を備えた人材を育成する。
 「理学療法士は、医療・福祉の現場はもちろん、本学の強みであるスポーツ分野、さらに教育や産業、地域包括ケアや在宅医療の充実まで、理学療法士の力は幅広いフィールドで期待されています」
 柔道整復学科。柔道整復は、古代より連綿と受け継がれた整骨術に、西洋医学や武術整骨術の要素が入り交じり確立した伝統医療。科学的な根拠のある理論に基づいた判断ができ、さらに患者が望んでいることを感じ取る感性や態度を身につけた人材を養成する。
 「柔道整復師は、接骨院・整骨院への就職や開業だけでなく、病院、スポーツの現場から、近年では介護老人福祉施設における機能訓練指導員まで、活躍の場が広がっています。地域のさまざまな患者様に貢献できる、よい医療人を育てていきたいです」
 鍼灸学科。鍼灸は、人間が本来持つ自然治癒力を高め、疾患の治療や病気の予防を行う。肩痛や腰痛などの運動器、消化器、婦人科系などの疾患への有用性がWHO(世界保健機関)で認められている。独立開業はもちろん、内科系、スポーツ医療系、小児科系、美容系など様々な分野で活躍できる力を身につける。
 「鍼灸師は幅広い分野で求められており、近年では美容鍼灸や婦人科系疾患におけるニーズも高まっています。鍼灸独特の治療が効果的な疾患も多く、まだまだ発展していく職業です」
 いずれの学科も、通信制課程の併修により、中学校・高等学校教諭一種免許(保健体育)の取得も可能だ。
 卒業研究ゼミなどによる少人数教育。「各学科各学年毎に専任教員が担任として学生をサポートしています。学生一人ひとりと教員が向き合い、授業・大学生活・友人との関係などをフォロー。安心して勉学に励むよう支援しています」
 ピアサポート(同じような立場の人によるサポート)を実践する。「初めての大学生活も上級生が下級生を支えることで安心して過ごすことができます。卒業生とも連携し、就職・国家試験に対する不安など、上級生がサポートします」
 国家試験対策。系列の専門学校と競い合うように全員合格を目指す。理学療法学科は、4年生前期に長期の総合臨床実習を実施、実習が終わり次第、国家試験対策講義が始まる。柔道整復学科、鍼灸学科では、4年生の4月から国家試験対策講義を開講している。
 「専門学校と合同模擬試験も行います。合格ラインに達していないなど個別のサポートが必要な学生には教員との個人面談を実施。各種国家資格取得を希望する学生の合格率100%を目指し、教職員が全力できめ細かく対応しています」

 過去4年、就職率100%

 母体の全国柔整鍼灸協同組合の支援による高い就職率。過去4年間の就職率は100%。「卒業生全員の医療系国家資格取得が信条ですので、4年次に受ける国家試験に不合格となった場合も卒業後の国家試験対策をサポートする体制を整えています」
 独自の社会・地域貢献活動。川西市と包括連携協定を締結、スポーツ大会へのボランティア派遣や生涯スポーツ指導者研修会に教員を派遣。「宝塚市とは、同市からの依頼で認知症予防体操の指導などのプロジェクトを立ち上げました」
 グローバル化。2019年に留学生別科を設置するなど国際化対応も積極的。台湾の中國医薬大学は、台中にある医療系総合大学。東洋医学と西洋医学の融合した同大附属病院で、学生が研修する。病院実習や実技授業を行い、修了証明書が授与される。
 「本学の学生限定でベトナムのホーチミン市医薬大学で解剖研修の研修を受けることができます。また、アメリカのリハビリ・プロスポーツの現場を体感する『ロサンゼルス・リハビリ・アスレチックトレーナープログラム』をつくり、希望者を派遣しています」
 大学のこれから。「日本では、介護などの医療系人材の確保が難しくなっています。医療の高度化も進み、そうした人材を育てるのが本学の使命です。社会のグローバル化が言われていますが、医療分野も、国際化対応が急務だと思います。海外からの留学生を育てたり、リカレント教育にも力を注いでいきたい」
 来年度から介護福祉別科(仮称、2年制)を設置する。「留学生や社会人らの人材を受け入れ、介護福祉士を育てます。留学生には日本語や日本文化を学ぶ授業があり、修了すれば4年制大学へ進学することもできます」

 和歌山市に新学部開設

 同時に、来年度、地元からの要請で新しい学部となる和歌山保健医療学部(リハビリテーション学科、作業療法学専攻・理学療法学専攻)を和歌山市に開設する。同大学は、グローバル化対応や地域の要請に呼応するなど新たなステージに向けて一歩を踏み出した。
 岸野は、同じ言葉で結んだ。「教職員と学生、地域が一体なって築く本学から、これからの社会を担い、課題を解決していく理学療法士、柔道整復師、鍼灸師のエキスパートを送り出したい」