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大学は往く 新しい学園像を求めて

<179>京都光華女子大学
女性が輝ける社会に貢献
三学部の学び  主体的に行動できる女性育成

 「智慧と慈悲という仏教精神に基づく女子教育」が建学の精神。京都光華女子大学(一郷正道学長、京都市右京区)は、おもいやりの心を持ち、これからの女性が輝ける社会に貢献でき、主体的に行動できる女性の育成をめざす。こども教育学部、健康科学部、キャリア形成学部の三学部からなり、「よりそい 育む 一人ひとりを しっかりと」をスローガンに、教育・医療・ビジネスというそれぞれの目指す分野で活躍できる女性を育む。入学前から卒業後まで一人ひとりをサポートするエンロールメントや"主体的に行動する力"を身に付けるアクティブラーニングに積極的に取り組む。「様々な資格、技術・技能を有することも大事ですが、それにとどまることなく、おもいやりの心、寄り添える心をもった人材を育て、社会に貢献したい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからなどを聞いた。
(文中敬称略)

仏教精神で女子教育 思いやりと寄り添う心

 キャンパスは阪急京都線 西京極駅から徒歩約7分。周辺は緑に包まれ、野球場や陸上競技場などを備えた西京極総合運動公園や閑静な住宅街が広がる。歴史と文化の街、京都で豊かな感性と人間性を育むことのできる恵まれた教育環境だ。
真宗大谷派(東本願寺)の仏教系女子大学。創立者は香淳皇后の妹で、東本願寺第24代門首夫人の大谷智子さま。1940年、光華高等女学校を開設した。
 校名「光華」は、経典『仏説観無量寿経』の一説「其光如華又似星月懸處虚空」から、清澄にして光り輝くおおらかな女性を育成するにふさわしい名称として名づけられた。校訓「真実心」は、仏の心(真実=自己を超えた広大清浄な心)である。
学校法人光華女子学園は、京都光華女子大学、短期大学部、京都光華中学校・高等学校、光華小学校(共学)、光華幼稚園(共学)を擁する。
 1944年、光華女子専門学校(数学科・生物科・保健科)を開設。50年に光華女子専門学校を光華女子短期大学に移行。文科、家政科を設置。光華女子大学(文学部日本文学科、英米文学科)は64年に開設。
2001年、大学文学部人間関係学科を人間関係学部人間関係学科に改組。同年、校名を光華女子大学から京都光華女子大学に改名。08年、大学人間関係学部を人間科学部に改称。
 10年、大学の文学部、人間科学部を改組。人文学部、キャリア形成学部、健康科学部を設置。人文学部に文学科、心理学科、キャリア形成学部にキャリア形成学科、健康科学部に健康栄養学科を設置。
11年、大学健康科学部に看護学科を設置。14年、大学人文学部を改組し、健康科学部に医療福祉学科、心理学科を開設。15年、大学こども教育学部こども教育学科を開設した。現在、3学部に1580人の学生が学ぶ。出身地は、京都、滋賀、大阪の3府県で75%を占める。
 学長の一郷が仏教精神について語る。「私たちは、自分のため(自利)になることには努力しますが、他人のため(利他)になることには心が及びません。私たちは、自分一人では存在できず、他者とのつながり、関係性の中にしか生きてゆけないのです。他なるすべてのものによって『生かしていただいている』存在なのです。これに気付くと、私を生かそう生かそうと働いていてくれるすべてのものに対して、おもいやり、寄り添える心が湧いてきます」
 同大学では、この仏教精神=教育理念を学びで具現化している。初年次の必修科目「京都光華の学び」や基礎・教養教育の「仏教の人間観」などがある。「おもいやり、寄り添える心、共に支え合う心を身に付けさせて社会に送り出したい」
IR活動にも力を入れている。「IRの目標を大学価値の向上に置き、その目的に①学生の成長支援②教育の質の向上③経営戦略への支援の3つを掲げ、建学の精神の具現化をめざしています」
3学部の学び。こども教育学部は、2コース制。学校教育コースは、専門知識を基に児童と幼児の個性を磨き育む教員を、幼児教育コースは、子どもに寄り添い、豊かな感性を育む保育者を育てる。「おもいやりの心と実践力を持つ小学校教諭、幼稚園教諭、保育士を養成しています」
 健康科学部は、福祉、言語聴覚、心理、栄養、看護といった人々の生涯の健康に寄り添う専門職を養成。「少子高齢化や医療の高度化に伴い多様化するニーズに対応できる専門知識とスキルを身に付けると共に、専門職連携教育で他職種との協働ができる能力を有した専門職を養成しています」
キャリア形成学部は、ビジネス(経営学・商学系)、ホスピタリティ(生活科学・観光学系)、ソーシャル(公共社会学系)の3つの専門領域から自らの将来をイメージしながら学ぶ。「幅広い業種・業界や公務員など公共性の高い就職先をめざし、社会が求める輝く女性を育成します」
 学びの特長である個別指導では、全学生にクラスアドバイザーとして担当教員がつく。「進路や資格取得に向けてのサポートや授業の出欠状況、学習状況などを学生ポータル(光華navi)で把握し、個々をしっかりサポート。友人関係の悩みについても何でも相談できる存在です」

エンロールメント実施

 京都光華のエンロールメントは、学生たちの悩みを解決し、夢や希望を一緒に見つけて、在学中の学習面・生活面はもちろん、入学前から卒業後までを一貫してサポート。「すべての教職員が連携して一人ひとりに寄り添いサポートすることで、伸び伸びと成長することができます」
 アクティブラーニングは、授業などに積極的に取り入れている。「学生の学力や授業水準の向上をめざし、能動的に行動ができる女性の育成、プレゼンテーション能力の強化に力を入れています」
産官学連携プロジェクト科目では企業や地域と連携して、実際の社会問題の解決や商品開発などの課題に取り組みながら実践力を身につける。同大学のアクティブラーニングの取り組みは、文部科学省の「平成26年度大学教育再生加速プログラム(AP)」に採択された。

2つの組織で就職支援

 就職力。就職率は、98%。2つのセンターが、就職を支援する。「女性キャリア開発研究センター」では、インターンシップやボランティア、PBL教育、資格取得などの社会人に必要な心・知識・能力を養成する。
「就職支援センター」では、実際の就職活動に向けての個別相談を中心とした就職支援を展開する。「ダブル体制で一人ひとりの夢の実現を強力にバックアップ。両センターが学科教員と協力して入学から卒業までの一貫したサポート体制のもとに展開。将来に向かって一歩づつ、確実な支援プログラムを準備しています」
 地域貢献は「地域に貢献し、地域から学ぶ活動」と位置付ける。学生自ら企画立案して新・右京区まちづくり支援制度や学まちコラボ事業に採択されたプロジェクトがある。▽光華子育て支援かがやき隊▽京北健康推進プロジェクト▽京都三条会商店街寺小屋事業などがそうだ。

女子大の強み活かす

 共学化する大学があるなか、女子大の強みを力説した。「男子がおらず、リーダーシップを培える、男子の目を気にせず学問ができる、保護者にとって安心感がある、の3つが強みで、今後とも活かしていきたい」
大学のこれから。「本学の出発は文学部でしたが、教育・医療・ビジネスと実学にシフトし、就職実績など成果は上がっています。今後とも、教育研究の質の充実を図り、時代の要請にかなった人材を育てていきたい」と述べたあと、こう続けた。
 「2020年の東京オリンピック、パラリンピックに向けて日本は動き出していますが、メダルの獲得にしのぎを削るだけで潤いの心に欠ける国、社会になってはなりません。建学の精神を基に、おもいやりの心、寄り添える心を持つ人材を育成し、世界に貢献したく思います」。最後は、建学の精神に返るのだった。