特集・連載
大学は往く 新しい学園像を求めて
<227>日本医療科学大学
医療・福祉の専門家育成
個別指導で国家試験対策 幅広い教養と人間性養う
幅広い教養と人間性を身につけた、医療・福祉分野で活躍できるスペシャリストを育成する。日本医療科学大学(新藤博明学長、埼玉県入間郡毛呂山町)は、城西医療技術専門学校が前身で、2007年、医療の高度専門化に対応すべく開学した大学。診療放射線技師、理学療法士、作業療法士、看護師、臨床工学技士と幅広く、チーム医療の一端を担う高度な専門知識と豊かな人間性を備えた医療人を育てている。①高度な専門性、情報化、国際化に対応できる能力を修得する独自のカリキュラム②個別指導を重視した国家試験対策③就職支援センターと同窓会ネットワークによる就職の強さなどが特長。「人間の生命を尊重し、相互に助け合い、思いやりの精神をもち、知識や技術を身につけるだけでなく、常に問題解決に向かって意欲的に取り組む人材を育成したい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)
建学の精神は「報恩感謝」
建学の精神は、「報恩感謝」。新藤学長が説明する。「近時、物質文明至上主義の傾向が強くなったなか、人間本来の心の豊かさ、優しさ、逞しさ等の精神文化重視こそが幸せに結びつくものとなっています。その精神は、東洋道徳の根源である『子は親に考養をつくせ』という報恩感謝の4文字に込められています。創立者の掲げた理念で、現在も引き継がれ、医療現場で実践できる人材の育成に努力しています」
日本医療科学大学は、1960年に東京都豊島区に開学した城西レントゲン技術専門学校が淵源だ。71年、城西放射線技術専門学校と改称。84年、現在の毛呂山町に学校法人城西学園城西医療技術専門学校(診療放射線学科)を設立。
96年、城西医療技術専門学校に理学療法学科を開設。99年、作業療法学科を開設。2003年、学校法人埼玉城西学園を設立、城西医療技術専門学校を移管。06年、学校法人城西医療学園に組織変更、日本医療科学大学設立認可。
07年、日本医療科学大学が保健医療学部の1学部、診療放射線学科、リハビリテーション学科(理学療法学専攻・作業療法学専攻)の2学科2専攻で開学した。
「前身の城西医療技術専門学校は、長年にわたって医療・福祉分野に優秀なスペシャリストを送り出してきました。新しく生まれ変わった日本医療科学大学は、その実績を踏まえ、医療の高度・専門化に対応し、ボランティアや国際交流などを通じて人としての素養を身につけた人材を育てています」
12年、看護学科、臨床工学科を開設。「看護学科を設けたのは、医療系総合大学をめざしており、そのためにも必要な学科と考えました」
現在、保健医療学部の1学部4学科2専攻に、1464人の学生が学ぶ。男子が53・5%、女子が46・5%。出身地は、埼玉を中心に東京、群馬など関東地区が大半。
保健医療学部は、保健医療に関する高い専門性を有し、豊かな人間性と適切な倫理観を併せ持ち、保健・医療・福祉の領域で活躍できる人材を育成する。
「日々進歩する医学の成果を十分に取り入れた授業を行うことはもとより、より『チーム医療』に対応した演習や実習を充実させることによって"人間性豊かな医療人"を育みます」
各学科の学び。診療放射線学科は、高度な専門知識と確かな技術を持ち、メンタル面でもサポートできる診療放射線技師を育成する。
リハビリテーション学科の理学療法学専攻は、思いやりの心と確かな技術を持ち、「考えることができ、創造できる」理学療法士を、作業療法学専攻は、豊かな人間性と論理的な思考力、確かな技術により「心」と「身体」の両面にアプローチできる作業療法士をそれぞれ育成。
看護学科は、知識・理論、倫理観に裏付けられた技術教育を重視、チーム医療の一員として協調・協働できる看護師を、臨床工学科は、いのちを守る医療機器の操作と保守・管理を行う医療機器のエキスパート、臨床工学技士をそれぞれ育成する。
独自の「学修支援」。入学前から課題学修や宿泊セミナーを実施して準備期間を設け、安心して大学での学びをスタートできる。医療・基礎教育科を設け、基礎教養や基礎医学への理解を深め、専任の教員が、苦手科目を個人の理解度に合わせて丁寧に指導する。
「具体的にこれをしたいということではなく、漠然と医療系で働きたいと入学する学生もいます。こうした学生をケアするため、病院を見学し臨床の現場を肌で感じてもらうことや、実際に医療現場で働く方を講師として招き、やりがいを伝えることで、モチベーションを高めています」
全学生が国家資格取得をめざす。個別指導によるきめ細かな国家試験対策を行っている。医療・基礎教育科の学修も背中を押す。「4年間を通して基礎から高度専門教育までの学修支援プログラムを用意し、国家試験合格へと導きます」
カリキュラムは、1年次から、一般教養だけでなく専門的な分野の生理学、解剖学などが含まれており、病院実習などもある。「実習は、現場に出ている先輩たちのすぐそばで学ぶことができるだけでなく、改めて自分の目標を再確認できる機会でもあります。実習で学んだ経験は国家試験合格につながります」
就職率は、ほぼ100%。就活支援では、「就活"ゼロ"宣言<CODE NUM=023B>」を掲げる。「就職支援センターの様々なサポートにより就職活動の長期化を避け、学業に専念できる環境づくりと、キャンパスライフの充実を実現しています」
求人説明会は、キャンパスでなく、東京国際フォーラムや池袋サンシャインシティで単独で開催している。「今年度は、本学に関心をお持ちの全国の施設・病院から600人以上の担当者の方々にご参加いただき、内定獲得までの具体的な話が活発に行われました」
地域貢献活動には、独自色が見える。地域の社会福祉施設で子どもや高齢者を対象としたイベントに学生が参加する。「普段あまり接することのない方々の介助や交流を行う貴重な機会となります。医療従事者をめざす上で良い体験になっています」
積極的に地域・社会でボランティア活動を行った学生を表彰する制度がある。「在学中(4年間)に、地域・社会活動に積極的に参加し、顕著な実績をあげ、地域社会に多大な貢献をしたと認められる学生を表彰しています。例年、10人程度が表彰されます」
国際交流、グローバル化にも力を入れる。台湾やベトナム、フィリピンの大学と学術協定を結び、積極的に交流を深めている。また、学生による海外の学会での研究発表を行っている。さらに、国際交流研究センターが中心となって学生の国際感覚を磨くための海外研修を実施。「医療の現場はもとより、異国の歴史・文化を学びながら現地の人との交流を通じて視野を広げています」
米オレゴン州の海外研修では、乳がんサバイバーの方とのドラゴン・ボート体験をする。「この体験は、多くの肉体的および精神的メリットがあると言われています。アメリカの医療・福祉活動を体験する意義ある研修になっています」
海外でボランティア活動も行っている。「オレゴン州ポートランドで、州が運営する孤独になりがちな高齢者に食事を配る『ランチ・デリバリー・サービス』に現地の登録ボランティアと一緒になって活動しています」
大学のこれから。「日本は、いま政治・経済だけでなく、医療分野においても、グローバル化やIT化が進んでいます。しかも、取り巻く環境は少子・高齢化という課題に直面しています。医療従事者の役割は、ますます大事になってきます。医療業界で働きたいという人を幅広く受け入れ、医療職の魅力とやりがいを伝え、国際的な感性と人を思いやる心を持った医療従事者を育てていきたい」
新たな時代、学科の新設などは?「医療分野では、病気や治療法が細分化され、職種も広がりを見せています。臨床検査技師や言語聴覚士といった資格をとれる学科の新設を視野に入れています」。前をじっと見つめながら凛々しく語るのだった。