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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<226>名古屋文理大学
個の力が光る若者を育成
地域貢献活動に尽力 最先端のICT活用授業

 「食と栄養と情報」を教育研究の3つの柱として学生を育てる。名古屋文理大学(景山節学長、愛知県稲沢市)の立学の精神の要諦は「学問を通して知識技術を磨く」。1956年創立の名古屋栄養専門学院が淵源である。66年に名古屋栄養短期大学、99年に名古屋文理大学が開学。現在、稲沢市と名古屋市にキャンパスがあり、大学が2学部3学科、短大が1学科2専攻へと発展した。日本の大学で初めて入学生にiPadを無償配布するなど最先端のICT活用授業を実施。①個の力が光る若者を育てる教育理念②アクティブラーニング等による充実の教育③資格取得を重視した学び―などが特長。「立学の精神の具現化を使命として、これまで多くの人材を育てて世に送り出してきました。今後も『食と栄養と情報』の大学として発展していくことで高等教育機関としての使命を果たしていきたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

立学精神 学問を通して知識技術を磨く

 学長の景山は、名古屋大学理学部卒、1971年、名古屋大学大学院修了。京都大学霊長類研究所教授を経て、2010年から名古屋文理大学へ。12年から学長を務める。専門は、生化学、栄養学、分子生物学。硬いイメージだが、気さくな一面もある。
 取材するなかで、新聞のスクラップを見せながら「教育学術新聞の記事は役立っています。『大学は往く』は、他の学長は、何を考え、どう(改革)しようとしているのか、がわかり参考になります」。取材がスムーズにいったのは言うまでもない。
 名古屋文理大学は、1941年に創立の農林省財団食糧科学研究所にさかのぼる。同研究所は、航空(宇宙)食やビタミン食といった先端研究を行っていた。この研究所の運営に関わっていたのが同大の創設者、滝川一益だった。
 「戦後、滝川先生は、健康の維持には、量の確保だけではなく、栄養学に基づいた食品の質を重視すべきだとの考えを持って、これらの研究をより深め、広く伝えてゆく場として栄養専門学校を設置しました」
 滝川は、「学問を通して知識・技術を磨く」を教育の重要な理念として、1956年、名古屋市西区に名古屋栄養専門学院を開設。66年、名古屋栄養短期大学が開学。83年、稲沢キャンパスを開設。
 99年、名古屋文理大学(情報文化学部)が開学。2003年、健康生活学部を開設。05年、名古屋文理短期大学を名古屋文理大学短期大学部に改称。12年、情報文化学部を改組し、情報メディア学部に。
 稲沢キャンパスに健康生活学部と情報メディア学部、名古屋キャンパスに短期大学部があり、1380人の学生が学ぶ。男女比は、ほぼ1対2で、出身地は東海3県(愛知、岐阜、三重)が大半だ。
 景山が大学を語る。「小規模な大学なので、学生間あるいは学生と教職員がふれあい、全員がお互いの顔や名前を覚えることができます。また、世界の誰からも信頼される人間の育成を目ざす観点から、学習意欲が有れば社会人や外国人など年齢・国籍等を問わない、多様な学生を受け入れるユニバーサルアクセス型の学校を目ざしています」
 2学部の学び。健康生活学部は2学科。「食と栄養」を教育研究の基本に、「栄養と健康」や「食とそれをとりまく生活・経済」を科学的・総合的に探究。健康な人生をすごすために様々の課題に取り組み、解決できる人材を育てる。
 健康栄養学科は、管理栄養士を養成。人々の健康の維持・増進や、生活習慣病などの予防を目的として、栄養学の幅広い知識と技術を身につけ、的確な栄養指導と栄養教育を行い、人々の健康な生活に貢献する。
 「管理栄養士国家試験の合格に向けて、独自のシステムで全面支援。新しい時代を担う"管理栄養士"を養成。病院、福祉施設、給食施設、食品業界、あるいは学校や官公庁など様々な社会の場で働く実践的な人材を養成します」
 フードビジネス学科は、「食」にかかわる生産から消費までの各分野について学び、将来、「食の安全・安心」を基盤にした豊かな食生活を支えるフードビジネスの世界で活躍できる人材を養成。
 「食品や栄養についての知識はもちろん、店舗の運営や経営、起業のノウハウやマーケティングなどの専門知識やスキルを身につけます。食品メーカー、食品流通業や外食産業などの多様な『食』産業界での活躍を想定しています」
 情報メディア学部は情報メディア学科の1学科4コース。「情報システム」は高度な複合スキルを有するシステムエンジニアやモバイル技術者を、「映像メディア」は先端技術により芸術的表現を追求するクリエータを目指す。
 「サウンド制作」は音楽、音響などコンピュータで制作するサウンドの知識、技術を身に付けた音のスペシャリストを、「メディアプランニング」はマーケティングセンスや企画・演出力を身につけて、企業、自治体、マスコミなどで活躍できる人材を目指す。
 1年次は、テーマ別に少人数ゼミで学び、社会とつながる専門の学びを深める。2年次からのコース選択では、他コースの授業の履修が可能。「学科の特別プロジェクトとして、4コースの領域がコラボする学生プロジェクトを実践。時代が求める『複合スキル』を身につけます」
 全入学生にiPadを無償配布した先見性。授業はICTを活用した学生参加型。「反転授業」や「アクティブラーニング」を実践。LMS(学習管理システム)で学生からの意見を集約したり、e-Learningで各種の資格取得対策も行っている。
 「オリジナルの動画像や、カラーの資料を配信し、学生が選択方式の確認問題にiPad上の資料を見ながら解答することができます。学生間や学生と教員間の双方向の授業が実現。制作した映像作品やアプリ、そして各自の研究内容もiPad上の電子ポートフォリオにまとめて自己アピールに使えます」
 就職率は常に97%を超えており、全国平均を大きく上回っている。平成30年度の就職率は 100%。業種別では、給食会社41%、小売り23%、医療福祉関係16%、食品製造12%、団体2%、公務員・教員2%。
 教授会内に就職委員会を設置、事務組織としてはキャリア支援センターが対応している。「就職委員会は月1回開催され、支援センター職員も出席し、就職支援計画の作成・検討と実行に当たっています。インターンシップ運営委員会も設置、これらの組織が連携して支援しています」
 地域貢献は、稲沢市民会館が「名古屋文理大学文化フォーラム」と呼ばれるのに象徴される。同大がネーミングライツを獲得した。稲沢市の芸術・文化活動の拠点として親しまれている。「3つのホールを備え、日本の優良ホール100選にも選ばれており、様々なコンクールの会場としても利用されています」
 同大の持っている力を内側だけでなく、地域の発展につなげるため、稲沢市や小牧市、名古屋市西区などと連携、地域のまちづくりの推進などに取り組む。
 大学のこれから。「18歳人口の減少を迎え、小規模大学は単独での生き残りは厳しいともいわれています。本学は、半世紀の歴史のなかで高い技能をもった栄養士を社会に送り出して来ました。栄養士がコンピュータを使い、食と情報を組み合わせるなど本学の特長を伸ばしていきたい。社会人や留学生の受け入れも前向きに考えていきたい」と述べ、こう結んだ。
 「学園の将来像を描いた『ビジョン2012』で、『人とのふれあいを深め、個の力が光る若者を育てる大学』を打ち出しました。地域に支えられた大学として、地域との連携を強め、今後とも栄養・食・情報の分野で高度な能力と技能をもち、社会的職業的に自立できる人材を、使命感をもって育てていきたい」。静かな口調だったが力が籠っていた。