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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<221>芦屋大学
ビジネスリーダーを育成
「人間力」を養う 学生の個性と可能性伸ばす

 「人それぞれに天職に生きる」が建学の精神である。芦屋大学(比嘉悟学長、兵庫県芦屋市六麓荘)は、1964年に元大阪府立大学教育学部長の福山重一が、自らの理念を実現するために設立した。学生一人ひとりの個性と可能性を伸ばすことに力を入れている。現在、臨床教育学部と経営教育学部の2学部3学科からなる。①少数精鋭の指導環境による少人数教育②礼儀礼節を大切に考える人間力を培う学び③スポーツを通しての人間力育成―などが特長。ソーラーカーレースでは伝統がある。スポーツに力を入れ、プロ野球選手も出ている。学長の比嘉が取り組んできた組織と教職員意識の改革は志願者が増えるなど成果を上げている。「『今社会が求める人材』を常に意識しながら、学生一人ひとりの『人間力』を育成。経営者、技術者、教育者、それ以外の分野に向けて、次の時代を担っていくビジネスリーダーを育てたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

建学の精神  人それぞれに天職に生きる

 キャンパスは、神戸や大阪の街が一望できる超高級住宅街の六麓荘にある。かつて、ここには芦屋国際ホテルという高級ホテルがあったが、終戦後、GHQが占用。学舎として利用していたが、1995年の阪神・淡路大震災で全壊した。 
 芦屋大学の淵源は、1936年に設立された芦屋高等女学校(現芦屋学園中学校・高等学校)。戦後の1951年、財団法人芦屋啓成会が学校法人芦屋学園になる。高等女学校開設以来、80年以上の歴史と伝統を誇る。
 創立者の福山重一は、大阪府立大学教育学部長のとき、自らの理念を私学で再建するために1964年、芦屋大学を設立。私学では希少な教育学部教育学科の単科大学でスタートした。
 比嘉が創立者を語る。「『人それぞれに天職に生きる』を建学の精神として、自立し社会に役立ち貢献する『人間力』を身につけるためのキャリア教育を唱え、手厚い少人数制で人材育成を推進、有為な卒業生を社会に送り続けてきました」
 65年、教育学部に産業教育学科を設置。当時、ソニー会長だった盛田昭夫が、産業教育学科を激賞、海外にも紹介。「同学科を中心に経営者二世や企業リーダーが輩出、当時は、企業経営者の子息が進学する大学としても有名でした」
 現在はどうか。「駐車場に外車が並んでいたといわれた時代もあったが、現在は奨学生も他大学と同じくらいいます。国家試験など資格取得を重視しており、2018年度の教員採用試験では現役30人中14人、過年度生24人の38人が合格しました」
 68年、大学院教育学研究科教育学専攻修士課程・博士課程を開設。72年、教育学部に英語英文学教育科、73年、教育学部に児童教育学科を増設。
 85年、大学院教育学研究科英語英文学教育専攻修士課程、86年、大学院教育学研究科技術教育専攻修士課程をそれぞれ開設。06年、教育学部英語英文学教育科を教育学部国際コミュニケーション教育科に変更。
 07年、教育学部を臨床教育学部(教育学科、国際コミュニケーション教育科、児童教育学科)と経営教育学部(経営教育学科)に改組。同年、大学院附属機関として発達障害教育研究所、10年、スポーツ教育センターを設置した。
 現在、807人の学生が学ぶ。男女比は、男子7、女子3の比率。出身地は、兵庫と大阪が大半を占める。留学生は、96人。韓国の湖西大学校、聖潔大学校と中国の寧波大学からの交換留学生もいる。留学生が増加、グローバル化が進む。
 比嘉が取り組んだ大学の組織と教職員意識の改革。キャリア支援センターが就職部となり「卒業生全員がそれぞれの天職の仕事に就く」を目標に掲げ全学一丸で取り組んだ。「芦屋大学授業全力宣言」をつくり、教職員が協働して授業の充実に傾注した。
 学長自ら立ち上がり、『人間学概論』の講義を始めた。「創立者の福山先生の教えや私が読み聞き体験したことを話し、学生には感想のレポートを書かせています。文章力がつき、立派なレポートを自主的に提出するようになりました」
 「教職員は学生一人ひとりと向き合う、きめ細かな指導を行い、学生の授業への取り組みが前向きになってきました。就職率は、ほぼ100%と以前(91~92%)に比べ向上。善行などで本学の学生を評価する住民の声も届いています」
 2学部の学び。臨床教育学部は、教育学科(教育学、心理学、スポーツ教育、地域スポーツ指導者、ダンスの各コース)と児童教育学科(幼児教育、初等教育の2コース)の計2学科7コース。ダンスコースは、2012年度から中学校の保健体育の授業でダンスが必修化され開講した。
 同学部は、教育現場に柔軟に対応できる教育者の育成、スポーツを通しての人間力育成と多文化共生社会で縦横に雄飛できる国際人の育成を主眼としている。
 「さまざまな個性が集まる中で、すべての学生に求めているのは、その分野でリーダーシップをとれる人になるということです。自分の夢を追いながら次の世代まで導くことができる、そんな『人財』を一人でも多く育てたい」
 経営教育学部は、経営教育学科(経営マネジメント、自動車技術、バレエ、技術・情報教員養成の各コース)の1学科4コース。バレエコースは、著名な指導者から技能を磨き、将来、バレエ教室の経営をめざす。
 同学部は、豊かな知識と理解力で、社会変化に機敏に対応し、社会に貢献できるビジネスリーダーの育成が主眼。どのような環境においても状況判断・改善ができる知識やセンスを養う。
 「製造業からサービス業までさまざまな業種やビジネスの仕組みを研究し、時代に即したセンスとスキルを磨きます。家業の継承や起業などに向け、経営を実践的に学びながら人間性を深める教養や心得を修得する経営学専攻もあります」
 比嘉は、高校時代、バスケットボール部でインターハイに出場。日体大卒業後は教員として大阪府の教育に尽力、全国高体連副会長も務めた。府立北千里高校校長を経て2014年から芦屋大学学長。17年から理事長も兼務する。

 スポーツ通じ人材育成

 スポーツを通じた人材育成をめざす。同大学野球部は競技連盟には所属せず、BFLの兵庫ブルーサンダーズと提携。「元プロ野球選手の指導を受けながら、個々の成長をめざしています。2人のプロ野球選手が誕生しました」
 リオオリンピックのシンクロナイズドスイミング(2017年よりアーティスティックスイミング)で銅メダルの乾友紀子は同大職員、林愛子は卒業生。ボクシング部は3年連続関西リーグを制覇、女子バレーボール部は、関西1部リーグに所属、全国大会でも活躍している。
 「各運動部に優れた指導者が揃っています。また、スポーツ推薦の学生は、率先して挨拶をします。これが広がり、学園全体が明るくなりました。スポーツをやる学生の成績がよく、教員採用試験合格者の7割を占めています」
 地域貢献にも尽力する。ソーラーカープロジェクトは、地域の小中学校を訪問、児童・生徒に次世代エネルギーの授業を行っている。スポーツを通した地域貢献や産学連携も積極的に取り組む
 「トップアスリートと地域の親子が集う『親子スポーツフェスティバル』は地域の共感を集めました。市内の中学校の柔道の授業に補助員として柔道部の学生が参加、本学グラウンドではサッカースクールを開講し、学生が地域の小学生を指導しています」
 大学のこれから。「本学には揺るぎないバックボーンがあります。創立者、福山重一先生の教育理念でもある『人それぞれに天職に生きる』の建学の精神です。これは、現代の大学教育にこそ求められています。この建学の精神と伝統を継承発展させるべく、これからも邁進していきたい」

 少人数教育を活かす

 具体的には?「教職教育・経営教育・スポーツ教育・キャリア教育の4つを柱に本学の特色を打ち出し、少人数教育の利点を活かし、教育の質をさらに高めたい。スポーツやクラブ活動など実践過程を通して、コミュニケーション、主体性、協調性など豊かな人間性と教養を育み、教職員が学生一人ひとりと真剣に向き合う面倒見の良い大学をめざしたい。将来的には時代のニーズにあった学部学科の新設も考えています」
 比嘉は、取材の中で「スポーツの力とは、社会を支え、日本を変えていく力です」、「チームの勝利よりも個人の成長が最大の目標です」とスポーツの力を熱く語った。このスポーツマン学長の自負と矜持は、必ずや日本一の「面倒見の良い大学」に繋がるに違いない。