特集・連載
大学は往く 新しい学園像を求めて
<218>大阪成蹊大学
学びの充実、就職の支援
PBLを推進 アクティブラーニング徹底
大阪成蹊大学(武蔵野實学長、大阪市東淀川区)は2003年に設立された新しい大学。母体の大阪成蹊学園は1933年に創立され、長く大阪の女子教育を支えてきた。「成蹊」の名は、中国の司馬遷の『史記』にある言葉「桃李不言下自成蹊」に由来。この言葉を「建学の精神」として、徳があり、人に慕われ、信頼される人を育てることが教育目標。現在、マネジメント学部、教育学部、芸術学部の3学部を擁し、各学部にはユニークな教育課程で構成される多様なコースがある。アクティブラーニングを導入、広く社会と関わる中で課題を発見し、調査・研究を進めて解決策を導き出すPBL(Project Based Learning 課題解決型学習)を推進する。「本学にはさまざまな学びに興味や関心を持った学生が集まり、各学部・コースのそれぞれ持ち味の違う学生が、ともに学修することで刺激し合い、新しい学びへの意欲が形成されています」と語る学長に、学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)
建学の精神 桃李不言下自成蹊
学長の武蔵野が「建学の精神」を語る。「『桃李不言下自成蹊』は、司馬遷が『徳があり尊敬される人』を『桃』や『李』(すもも)に譬えて賞賛した言葉です。人々に頼りにされ、自然に蹊(こみち)ができるほど人々が集まってくる人を育てるというのが本学園の教育方針です。人々から信頼され、頼りにされる人とはどのような人でしょうか?それは、人に夢や感動を与え、人を幸せにする人、広い知識と卓越した能力を持ち、地域社会や組織のために尽くす人、すなわち『人間力』のある人です。人間力のある人材を育てていきたい」
大阪成蹊大学は、1933年に創設された高等成蹊女学校が淵源だ。37年、大阪高等成蹊女学校に校名変更。戦後の48年、大阪成蹊女子高等学校を開設。51年、大阪成蹊女子短期大学(国文科と家政科)が開学。
2003年、大阪成蹊大学が開学、現代経営情報学部(現代経営情報学科)を相川キャンパスに、芸術学部(美術・工芸学科、デザイン学科)を長岡京キャンパスに設置。12年、芸術学部は、コースを再編するとともに長岡京キャンパスから相川キャンパスに移転。
14年、教育学部(教育学科)を開設。16年、マネジメント学部にスポーツマネジメント学科を新設し、マネジメント学科との2学科に改組。18年、大阪成蹊大学のマネジメント学部に国際観光ビジネス学科を開設、教育学部教育学科に初等教育専攻、中等教育専攻を開設した。
大阪成蹊学園は、大阪成蹊大学のほか、びわこ成蹊スポーツ大学・大阪成蹊短期大学・大阪成蹊女子高等学校・こみち幼稚園を擁し、在籍者数7100人超、専任教職員数約550人、卒業生総数約11万5000人を誇る総合学園となった。
現在、3学部5学科に2141人の学生が学ぶ。留学生が中国、ベトナムなどから127人。男女比は、男子4、女子6の比率。出身地は、大阪が約60%で近畿圏で約85%を占める。
3学部の学び。マネジメント学部は3学科で、様々な分野の経営に関する学びを重視、海外や学外のビジネス体験を含め国際感覚豊かな人材を育成。新設の国際観光ビジネス学科では、英語の授業は週450分と多く、1年生は全員、夏季に3週間、カナダに留学する。
「1年次の留学体験は、学ぶ姿勢が前向きになるなど成果が出ています。真に活用できる語学力を持ち、国際ビジネス、観光ビジネスで活躍するビジネスパーソンを育成していきます」
芸術学部は大阪北部唯一の芸術学部で、デザインを主とし、マンガやアニメーションなどを学ぶ。「企業や自治体と連携した課題解決型学習で、学生の達成感と同時に社会で仕事をする上での実践力をつける教育を進めています」
現場を知るトップクリエイターをはじめ、専門的なプロのクリエイターなどの強力な教員から直接指導を受けることができる。「実践的に学んだ技術と知識によって、コンテスト入賞など、成果を挙げる学生がますます増えています」
マネジメント学部と芸術学部は、キャリア教育科目「キャリアデザイン2」の授業で、企業から提示された課題に対してチームで解決策を考える企業連携PBLを行っている。「両学部2年生の学修成果を発揮する場として実施しています」
教育学部は大阪市、京都市をはじめ15の市町の教育委員会と連携協定を締結。「教育インターンシップ、教育実習などの体験的学習を学校と連携して実施、実践力豊かな教員を育てています」。新設の2つの専攻に期待を寄せる。
「中等教育専攻では、中学校教諭一種免許状(英語・保健体育)、高等学校教諭一種免許状(英語・保健体育)を取得した上で、小学校教諭一種免許状を取得することができます。初等教育専攻では小学校教諭一種免許状、幼稚園教諭一種免許状、保育士資格の3つの免許・資格が取得できます」
この6年間、教育改革に果敢に取り組んできた。改革は、①倫理観や品格、品性を養う教育②即戦力人材を育む専門教育③アクティブラーニングの展開④教員の教育力向上⑤多様な実務家教員の採用⑥グローバル教育の推進など10項目にわたっている。
アクティブラーニングでは、教員全員にハンドブックを配り、実社会の中で総合的な判断力を身につける授業を実施。「企業や地域から提示される課題に対して、学生たちがリサーチや議論を重ね、課題解決を行う実践型学習を行っています」
年間30時間の教員研修
教育力の向上では、学生による授業評価アンケートや年間30時間の教員研修を実施している。授業実践などに優れた教員をベストティーチャーとして表彰する。「授業の出席率は9割を超え、授業満足度も5段階評価で4・0を超えるなど高い評価となっています」
グローバル化を徹底
グローバル化推進では、3月に「グローバル館」が竣工。英語教育を推進する「英語教育センター」を拡充、学生が自由に英会話を楽しんだり、イベントに参加できる「English Studio」を設けた。「授業と連動した個別指導を受けたり、留学相談ができるように英語教員や英語に堪能なスタッフが常駐しています」
国際交流・留学も徹底サポート。学びの専門性に特化したグローバル教育をねらいとし、海外研修プログラムを多数用意。「グローバル奨学金制度を導入し、海外研修費用の一部を奨学金として支給。アジア・欧米の協定校と交換留学制度のもと、活発に交流を行っています」
充実の就職サポート
丁寧な就職支援。就職率は99%(2018年3月卒業生)。キャリア教育・就職サポート・SPI対策という3つのプログラムで、教員や各学部専任の就職部スタッフが連携して、学生一人ひとりに合わせた就職サポートを行っている。
「個別相談や各種就職プログラムが充実。教育・保育には伝統があり、教員や保育士をめざす学生には、採用試験対策など、実務家教員や教育人材育成センターがサポートし、現役合格をめざしています」
地域貢献活動は活発。地元の大阪市東淀川区と地域連携協定を提携して様ざまな活動を展開する。「災害に備え、芸術学部は、安全で安心な避難所をめざしステッカーやデジタル紙芝居、漫画などの作成に取り組みました。こうした取組みが東淀川区の防災行政に採用されました」
活発なスポーツ、文化系サークル。スポーツ系では、陸上競技部(女子)、フットサル部(男子)、バトントワリング部、バドミントン部、テニス部、ソフトテニス部、卓球部を強化クラブに指定。
「各競技の選手たちは全国大会優勝や国際大会に照準を合わせて練習に励んでいます」。また、大阪ハーフマラソンや大阪エンジョイRUNなどでは、マネジメント学部スポーツビジネスコースの学生が大会運営をサポートしている。
大学のこれから。「これまで行ってきた教育改革は、学生数が増え、中退者が減るなど間違いなかったと言えます。しかし、18歳人口が減少するのは必至で、改革は続けなければなりません。学生のため、学生の成長のための大学であり続けたい。そのためにも、学びの充実、就職の支援を教職協働で行っていきたい」
「忠恕の心」をもって
一呼吸おいて「忠恕の心をもって」と締めくくった。「忠恕」は、建学の精神に基づく行動指針で、誠を尽くし、人の立場に立って考え行動することである。