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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<177>九州情報大学
卒業後に役立つ教育施す
強豪の相撲部・人気の吹奏楽 資格取得重視の就職支援

「幅広い知識と豊かな人間性を身につけ、21世紀の主役となる人間に」。九州情報大学(麻生隆史学長、福岡県太宰府市)は、1998年に経営学・会計学と情報学の融合をめざす経営情報学部の1学部で開学したフレッシュかつ小さな大学。新しい時代の企業家の育成を目指し、大学専門科目の予備的教養科目ではなく、卒業後に実際に役立つ教育を施す。アジアの中核といえる福岡に位置する大学として、韓国姉妹大学との学術交流など国際交流も積極的。コミュニケーションを重視し、資格取得重視のキャリア教育、自在にPCを活用した学び、手厚い奨学生制度―などが特徴。相撲部、陸上部、吹奏楽部の活躍も特筆される。「"至心をもって事にあたる人間づくり"を建学の精神に掲げ、今後とも、知識だけにとらわれない温かい人間教育に力を注いでいきたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

建学の精神 「至心をもって事にあたる」

キャンパスは、太宰府天満宮と指呼の間にある。菅原道真の墓所の上に社殿を造営、その御霊をお祀りしている。 「学問の神様」として、日本はもとより世界から年間800万人の参拝者が訪れている。一帯は、緑の木々におおわれている。
緑に包まれ、歴史ある静謐な環境に九州情報大学はある。1998年、 学校法人麻生学園が運営する麻生福岡短期大学(経営情報学科)を改組して経営情報学部(経営情報学科)の1学部1学科で開学した。学長の麻生が説明する。
「情報は工学系ですが、コミュニケーションをとるのも情報。経営は、かつては商業・簿記でしたが、いまは情報を取り入れることが必須です。経営の基礎を学び、これに情報を加え、情報倫理も備えた職業人を育てたいと考えました」
2002年、大学院経営情報学研究科経営情報学専攻修士課程を設置。04年、同専攻に博士後期課程を設置。05年、小郡キャンパスに経営情報学部(情報ネットワーク学科)を設置。08年、同学科を太宰府キャンパスに移す。
現在、406人の学生が学ぶ。出身は、福岡県が40%を占めるなど九州が圧倒的だが、留学生も169人在学している。男女比は、男子71%、女子29%。留学生の数は中国、ベトナム、韓国の順。吹奏楽部ができて女子が増えているという。
大学を語る。「21世紀の高度情報化社会にふさわしい、経営情報関連のスペシャリストの育成とともに、『至心』をもって社会に奉仕する人材を育成することが目標です。建学の精神は、私が、学生には初年次教育で、教員には教授会で毎回話をします。この建学の精神を授業に組み込んでほしいと教員には要望しています。この精神のうえに専門教育があると思っています」
2学科の学び。経営情報学科は「経営・会計と情報」をキーワードに、多角的な視点から経営学の真髄を学ぶ。
「IT技術を活用しつつ、財務や会計のエキスパートをめざす人、企業家をめざす人、商品の企画、開発やマーケティング戦略を学びたい人...。こうしたさまざまな目標の達成にこたえることのできる学科です」
学生が効率よく、体系的に学ぶためにコース制を導入。▽ビジネス・マネジメント▽会計エキスパート▽ベンチャービジネス▽ITマーケティング▽グローバル文化ビジネス▽Webビジネスの6コース。
情報ネットワーク学科は、経営に活用できる情報システム技術、ネットワーク技術に重点をおいて学ぶ。
「ネットワークに関連する情報通信技術の知識や実践的能力を高め、それらと経営学の融合を図ります。IT技術分野で指導的役割を果たす情報システム技術者、インターネットとその応用に精通したネットワーク技術者等を養成します」
情報ネットワーク学科も▽情報システム▽モバイル・プログラミング▽ネットワークスペシャリスト▽Webシステムの四コース制を導入。
大学の特徴のひとつ、小規模大学の良さ。「小さな大学のメリットを十分に発揮して、1年次から小規模クラス・科目を配置して、学生一人ひとりの進度に応じたきめの細かい丁寧な指導を行っています」
PCを活用した学び。「学生は全員ノートパソコンを携帯。学内に完備された2000ヵ所以上の情報コンセントと無線LANから簡単に情報収集、検索、分析できる環境と、パソコンの不具合などにも万全のバックアップ体制があります」
就職率は91.7%。「資格取得、生涯学習をすすめ、ひとりひとりの学生がキャリアアップを実感、実現できる指導を行っています」。資格・検定とリンクした授業を多く設定、高度の資格取得には「プレゼミ」を開講して指導する。
「福岡県中小企業家同友会に大学として初加入しました。地元中小企業と連携、キャリア教育科目に会社経営者を招聘したり、計画的にインターンシップを促進しており、地元の九州北部税理士会とも連携し、インターンシップを展開しています」

グローバル化にも傾注

グローバル化。開学から今日に至るまで韓国との関係を重視。福岡から釜山までは高速フェリーで3時間、ソウルまでも飛行機で1時間、東京に行くよりソウルのほうが近い。韓国の大学など4校と姉妹校協定を結んでいる。
「日本、とりわけ九州・福岡を中心としたこれからのアジア諸国の共生時代に、地域社会、国際社会に貢献できる意欲を持った若者、そのような21世紀の主役となれる若者達を育てていきたい」
地域・社会貢献。公開講座や社会人入学、スカラシップ(奨学生)制度の充実など、地域やさまざまな人に開かれた大学として認められてきた。毎年、鹿児島県薩摩川内市の甑島で、学生たちが子どもたちとの交流を行っている。
「太宰府キャンパスネットワークにも参加、太宰府や国立博物館を抱える文教都市としての特色を出す一翼を担いたい。また、公開講座を一層、充実させ、地元の高校と連携するなど地域の方々に愛される大学を目指していきたい」
活発な部活動。相撲部は、6月4日の西日本学生相撲選手権大会で、団体戦に優勝。「この大会での団体優勝は7年ぶり。全国大会でベスト8になったこともあります。次の全国体重別選手権大会を目指して、選手たちは、稽古に励んでいます」。部員は40人、女子部員もおり、OBには、大相撲十両の東龍がいる。

"吹奏楽の神様"が指導

吹奏楽部は、"吹奏楽の神様"の異名を持つ屋比久 勲教授が、2014年から指導。屋比久教授は、沖縄県の中学校や福岡工大附属城東高校、鹿児島情報高校を率いて30回も全日本吹奏楽コンクールに出場させた実績がある。
「部員はたった3人からスタートしましたが、翌2015年は九州吹奏楽コンクールで金賞を獲得。部員も年を追うごとに増え、現在、52名になりました。屋比久教授を慕って入学する学生もいます。定期演奏会も人気です」
こう付け加えた。「地方の小さな大学は、特色、つまり教育研究にプラスαが必要。そのひとつが部活動だと思う。部活動を経験した学生は、チームワークやコミュニケーション力があり就職にも強い。そうした意味からも部活動には今後とも力を入れていきたい」

キラリと光る大学に

大学のこれから。「少子化時代、キラリと光る特色を大学も、学生も持たないと駄目。大学は、教育研究にプラスαが必要。学生は、誰しもキラリと光るものを持っている。これを、どうやって伸ばすか。本学のような小さな大学は、教員と学生の距離が近く徹底した少人数教育ができる。学生は、教員に言えないことを事務職員に相談する。三位一体となって、キラリと光るものを見出していきたい。必ずや学生の満足度も上がっていくはず。また、福岡・博多にある大学院のサテライトキャンパスを将来的には学部で活用することも考えています」
最後は、建学の精神に戻った。「『至心』とは、この上ない誠実さで、積極果敢に事に臨む精神的態度を表しています。いつの時代でも、どこの場所でも人としての規範となるものです」
端正な表情で、力強く締めくくった。「至心を身につけ、キラリと光る人材をこれからも社会に送り出していきたい」