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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<176>九州共立大学
高い教養と実践力を育む
経済とスポーツ学部 2学部連携で人材育成

「未来をつかむチカラを、共に」。九州共立大学(奥田俊博学長、福岡県北九州市)の新しいキャッチフレーズ。大学の名称には「学生と教職員が共に立つ」という創設者、福原軍造の思いが込められている。1965年に創設され、「職業人養成 教育大学」として社会に出た際、即戦力となる職業人を育成する。建学の精神である「自律処行(自らの良心に従い、事に処し善を行う)」が学是である。少人数クラスによるゼミ形式の講義を取り入れ、学生一人ひとりに目を配り、きめ細かな指導を行っている。経済学部とスポーツ学部の2学部体制で、両学部の連携により幅広い分野で活躍する人材を育てる。学生スポーツも盛んで、野球部は第30回明治神宮野球大会(1999年)で全国制覇した。「学業や課外活動を通して高い教養と実践力を身に着けた学生を社会に送り出したい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。(文中敬称略)

「未来をつかむチカラを、共に」

新しいキャッチフレーズを学長の奥田が説明した。「学生と教職員が共に立つという創立者の思いを新しく形にしました。将来に向かっていく学生一人ひとりの力を、ひと手間もふた手間もかけて、学生が思っている以上に伸ばしていきたい。そうした思いが込められています」
創設者である福原軍造は、小倉師範学校を卒業後、教師を務めたあと、立正大学で学び、郷里に戻り中学校や高等女学校の教師を務めた。そして、1947年に九州共立大学の前身である福原高等学院を開校した。奥田が創設者を語る。
「福原先生は、学校の教育が、入試準備化し、詰め込み主義の知識偏重・学力優先となってしまい、人間を形成する教育がないことを憂慮し、『真の教育は私学でなければ実現できない』と決意、自らの理想とする学園を創設しました」
1950年、新学制によって福原高等学校を開校。以後、九州女子短期大学、九州女子大学、九州女子大学附属幼稚園、そして九州共立大学と次々に開学。幼稚園から大学まで擁する総合学園へと発展させた。

建学の精神は「自律処行」

学是「自律処行」について解説した。「『自律処行』は、福原軍造先生の人生を通じて豊かな教育体験から創造された箴言で、ここに学ぶものが生涯を通して生活体験の中で味得すべき人生訓です。『自律』とは、自己の志向や行為を道に照らし、我情、我欲、我見による不正を制することで、『処行』とは、事に処するに徳を以てし、知性にかなう道を行うことです」
九州共立大学は、1965年、経済学部(経済学科)1学部で開学。67年、工学部を開設。68年、経済学部に経営学科を増設。79年、工学部に環境化学科、開発学科を増設。
2006年、スポーツ学部を開設。08年以降、工学部の募集を停止することが決定、13年に廃部された。09年、経済学部経済学科と経済学部経営学科を経済学部経済・経営学科に改組した。
現在、2学部に2431人の学生が学ぶ。出身は、福岡県が43%で、沖縄を含む九州全体で79%を占める。男女比は、男子8、女子2で、「パウダールーム設けるなど女子学生を増やそうと努力しています」
2学部の学び。経済学部は2年前にカリキュラムを中心とした教育体制を一新した。1年次は、経済学・経営学の基礎知識と職業人(社会人)として不可欠な、基礎学力や一般常識などを修得。2年次から、学生一人ひとりの進路目標や資格取得を目指し、6領域から科目を選択して学ぶ。
「大学院を目指す人、公務員になって社会に貢献したい人、資格を取って第一線で活躍したい人など、一人ひとりの学生が持つ夢の実現に向けて、多様な選択肢に対応。人格形成を重視した教育を行い、学業と部活動等課外活動の両立ができるようにサポートします」
スポーツ学部は、専門知識や技能以上に、人間教育に重点を置いた教育を行う。1年次からクラス担任制により、実技、実習、実験、演習、就職指導など、一人ひとりに手厚く指導する。2年次からコースに分かれ、自分の進路目標を定め、それぞれのコースにおいて専門知識や技能を修得する。
「充実したスポーツ施設環境を背景に、スポーツ教育学の全てを網羅。 体験を重視する教育のなかで、人間力をはぐくみ、リーダーシップを発揮できる人材を育成しています」
北九州市内の大学で唯一保健体育の教職課程が設置されているため、北九州市内などから保健体育の教員を目指す学生が集う。「教員採用試験への取り組みとして教職サークルが設けられており、合格者も数多く出ています」
就職率(平成28年度)は、経済学部98.0%、スポーツ学部97.9%。独自の就業力育成プログラムと就職支援制度が後押しする。1年次からホームクラス制度を設け、担当教員が「キャリアアドバイザー」として、4年間を通して学生一人ひとりに徹底した就職指導を行う。
「学生の進路や就職に対する悩みに応えるキャリアカウンセラーもいます。課外授業として就職時に必要なパソコン資格や多種多様な国家試験などの資格取得を目指すことができる資格取得支援プログラムを設けています」
盛んな大学スポーツ。ラグビー場、サッカー場の全面人工芝、屋内公認温水プール...広大な敷地に近代的な施設・設備を有する。野球部のほか、陸上部、水泳部などが全国レベルの強豪。

野球部はプロ選手輩出

「全国各地からスポーツを志す学生が集まってきています。スポーツ学部の卒業生はスポーツ関連の仕事に就く者が多く、プロ選手や実業団の選手として活躍する者も少なくありません」。広島東洋カープの大瀬良大投手もそのひとり。
地域貢献活動も活発。▽地元の堀川を「まちづくり・まちおこし」の素材として展開する堀川活性化・PRプロジェクト▽北九州市教育委員会と提携した部活動をする学生の中学校への講師派遣▽児童自立支援施設への部活動指導補助ボランティアなど多彩。
「地域との繋がりを大切にしたい。真に優秀な学生を育成・輩出することが地域貢献に繋がると思います。地元地域に根ざした教育を行うため、ボランティア活動など、さまざまな形で今後とも地域に貢献していきたい」
2019年に日本で開催されるラグビーワールドカップでは、北九州市が海外の選手団の世話をする「ホストタウン」に手を挙げている。「スポーツ学部を持つ本学としても北九州市を全面的にバックアップしています」
グローバル化の取り組み。「世界31の大学等と姉妹校連携協定を結び、学生の留学を積極的に推進するとともに、海外からの留学生との異文化交流活動を展開しています」。海外からの留学生は、中国、韓国、イタリアなどから129人。
大学のこれから。「『学生と教職員が共に立つ』という原点を忘れることなく、地域社会との連携をより一層深めて、今後とも教育体制を充実させていきたい。学生に期待するのは、夢をもって未来を切り開き、多様な人々と協働して社会に貢献できる人物になってほしい。18歳人口の減少は地方の大学にとっても大変です。新しいことへの挑戦が求められています」

地域社会との連携強化

具体的には?「北九州市は、水質や大気汚染などの改善に取り組んできており、『環境都市』を目指しています。また、福岡県には、トヨタや日産の大きな自動車組み立て工場があります。環境やモノづくりといった面から、地域の自治体や企業とともに地域の大学として新しいものに取り組んでいきたい。そのためにはカリキュラム改編も辞さないつもりです」
奥田の頭のなかは、「学生と教職員が共に立つ」という学是と地域社会との連携がこびりついて離れない。