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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<216>神奈川歯科大学
4コース制で体系的に学ぶ
留学生20%国際色豊か 座学と連携、実習重視

 「愛の精神」の実践が建学の精神で、心豊かな歯科医師の育成をめざす。神奈川歯科大学(櫻井孝学長、神奈川県横須賀市)は、1909年に東京・神田に創立された東京女子歯科医学講習所が淵源。国内で初めて婦人歯科医師の養成を始め、109年の歴史を有する。1964年に神奈川歯科大学が開学、歯学部(歯学科)、短期大学部(歯科衛生学科・看護学科)を併設。歯学部は、少ない科目を集中して学修して苦手科目を作らない5Stage制と、国家試験対策に密接につながる実習を重視する実践的カリキュラムで歯科医師をめざす。①進化し続けるカリキュラムと無理のない着実な学修プログラム②学習面・生活面をダブルサポートするきめ細かな少人数制③充実したインターンシップと診療参加型の臨床実習などが特長。「真の歯科医師力を身に付けた、他者に対する慈しみの心を抱いた歯科医師を育てたい」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを聞いた。 (文中敬称略)

心豊かな歯科医師育成

JR横須賀駅から徒歩10分のキャンパスは、明治・大正期にあった海軍機関学校の跡地である。作家の芥川龍之介が英語教師として赴任。その友人の内田百閒は、随筆の中で、海軍機関学校の桜の美しさを書き残している。
 今でもキャンパス内は桜の名所で、桜のほか紫色の妖艶な花をつける中南米産のジャカランダの木もある。2つの樹木は、季節になると美しい花々が咲き乱れ、学生だけでなく周辺住民、遠方から来る人たちの目も楽しませている。
 1910年に開学した東京女子歯科医学校。「欧米諸国の歯科事情を視察した創設者の大久保潜龍が女子の歯科医学教育機関の必要性を考慮し、日本で初めて婦人歯科医師を養成するために設立しました」  1922年、東京女子歯科医学専門学校に昇格。24年、関東大震災のため、校舎・施設を品川区に新築移転。34年、学園規模を拡大し、日本女子歯科医学専門学校と改称。35年、当時の大森区北千束町に校舎・施設を新築移転。
 戦後の1950年、日本女子歯科厚生学校が開校。52年、日本女子衛生短期大学を開学。53年、日本女子歯科厚生学校を短期大学に吸収。63年、学園の所在地を東京都大田区から現在の神奈川県横須賀市へ移転。
 64年、神奈川歯科大学が開学。75年、歯科大学に大学院歯学研究科を開設。89年、短期大学名を湘南短期大学と改称。2010年、創立100周年を迎えた。13年、湘南短期大学を神奈川歯科大学短期大学部に改組。17年11月、最先端技術や設備を導入した地域に開かれた新附属病院が開院した。
 現在、704人の学生が学ぶ。男女比は、男子64%、女子36%で、出身地は、神奈川県が25%、東京都を含むと40%になる。留学生が145人と20%を占める。
 学長の櫻井が大学を語る。「歯科医師としての熟練と人間としての優しさを身につけるため、学をまなび、技を習い、人を識る愛の教育、という教育理念に基づき、共用試験・卒後臨床研修さらには21世紀の医療人育成のための教育改革などについても柔軟に対応できるカリキュラムを導入しています」
 歯学部歯学科の学び。「教育基本法の精神に基づき、高き人格と豊かな識見を養い、かつ歯科医学に関する高度の学術理論及び技術を教授・研究し、有能な歯科医師を育成。延いては、文化の向上と社会福祉の増進に貢献することを使命としています」
 実習を重視する。実習は1年次から実施し、座学と密接に連携した実践的な学修で理解を深める。5年次から始まる臨床実習は、本学の敷地内にある附属病院と横浜駅近くの横浜研修センターで実施する。  「実習の形式は、診療参加型で行われ、その実習期間も他の歯科大学と比較すると、半年ほど長いことが特徴です。臨床の現場で、患者さんに接する際の態度や、歯科医師としての心構えを学びます。臨床現場での体験は国家試験対策にもつながっています」
 横浜研修センターには、歯科にかかわりの深い医科分野として内科、神経内科、耳鼻咽喉科、眼科も併設されており、これからのチーム医療の習得に役立つ。
 学びの特長である5Stage制。1年間を5学期に分け、短期間に少ない科目数で学修できる、特徴のあるカリキュラム。これまで1年間を半期としていた前期・後期制から、7週間を1Stageとする。
 「各科目は6週間で履修できるように計画され、7週目には、到達度を確認する「モジュール試験(到達度試験)」を実施、学修が達していない場合、補完教育を行い、万全のサポート体制を整えています」
 充実の少人数教育。学年ごとに最大22人の学年担任を配置し、学生生活全般に渡ってサポートできる体制を整えている。さらに、「全ての授業を録画し、学生が誰でも自由に学修できるICT教育を取り入れています」
 また、自身の学修のステップアップを確実に実感でき、自学自修の励みになるようにGPA(グレード・ポイント・アベレージ)を導入。「GPAによって、厳格にそして適正に自身の学修状態を把握することができます」
 科目の流れを分かりやすく4つのコースに体系化している。「これまで専門性が高く複雑であった各科目を見直し、各科目間のつながりを重視します。学修の流れを理解しやすく、無駄のない体系化した学修プログラムで、全員が学びます」
 4つのコースとは、歯科医師となる態度、習慣、学修方法、研究マインドなどを修得する同大独自のプログラム「神歯大固有科目系」をベースにして、「生命科学口腔病態系」、「社会歯科医療系」、「歯科咬合医療系」の合わせて4コース。
 「生命科学口腔病態系では患者さんの診療に携わる歯科医師としての能力を、社会歯科医療系では社会が求める医療人としての能力や患者さんとのコミュニケーション力を、歯科咬合医療系では一般歯科治療における基礎知識および臨床能力を体系的に、それぞれ学修します」

米海軍基地とも交流

 キャンパスのある横須賀市は、米海軍基地があるため、国際色も豊か。グローバル化に力を入れる。7年前からアジア地域全体を対象とした国際歯科医療教育機関としての役割を担うべく、積極的に留学生の受け入れを行っている。
 現在、台湾、韓国、中国などから145人の留学生が学んでいる。外国人比率は、20.5%で全国の大学で5位にランクされる。「留学生は、歯科医学の研鑚を積んでいます。異文化交流を通してボーダレス時代に対応できる国際的医療人の育成をもめざしています」
 米海軍基地との交流も積極的である。「附属病院では、米軍基地の方も受け入れています。また、横須賀バイリンガルスクールをキャンパス内に設け、仕事で忙しい両親の帰りを、基地の子どもたちと一緒に過ごします。バイリンガルの経験が人気となっています」

海外で社会貢献活動

 社会貢献活動も活発。同窓会の主導により、主に歯科医療の整備が遅れている南東アジア地域における歯科医療ボランティア活動を行う組織、歯科ボランティアNPO法人・神奈川歯科大学南東アジア支援団(Kanagawa Dental Southeast Asia Support; KDU-SAS)を運営する。
 「学生や大学教職員、研修医、大学院生、同窓の先生らが参加。毎年、フィリピンにおける口唇口蓋裂患者さんへの手術支援活動や、タイ国プーケットにおける歯科衛生支援活動などを行っています」  大学のこれからを聞くと、2つあげた。「理数系を強化してから専門に入るというように、教育の質保証に力を入れていきたい。入学者の質の面からは、どの大学にもいえることだが、高校時代の勉強時間など二極化が進んでいる。リメディアル教育の教科の見直しも考えている」
 「キャンパス・アジアという視点で、これまで以上にアジア諸国からの留学生を増やして、多国籍化していきたい。同時に、歯学部がない県からの学生を集めるため入試広報活動を強化したい」。国際色豊かな横須賀にある大学の学長らしく締めくくった。