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大学は往く 新しい学園像を求めて

<114>プール学院大学
 現場主義と国際力を誇る
 教育学部を新設 特別支援教育コース設置

 130年をこえる長い歴史に裏付けられた伝統と確かな実績を持つ。プール学院大学(蔵田實学長、大阪府堺市)の建学の理念は、「キリスト教の精神を根底とする人格教育によって人類の福祉に貢献する」。1996年に国際文化学部(国際文化学科)の1学部で開学。地域や企業、海外との連携活動などを通じて教養を身につけ、社会で活躍できる人材を育成してきた。2014年、教育学部を開設、変動する社会のニーズに合わせ、幼稚園・小学校、中高(保健体育)、特別支援学校などで教育を担う人材を育成する。地域や地元企業と連携した体験を重視した現場主義と世界20カ国120大学とのネットワークを活かした海外留学・研修の充実など国際主義を誇る。「人格教育の伝統を礎に、個人を尊重し、個性を伸ばす教育を実践している」と話す学長に学院の歩み、改革、これからを聞いた。
(文中敬称略)

130年の伝統  キリスト教に基づく教育

 訪問を前に気になっていたことがあった。校名である。「大学名の由来は英国国教会から派遣されたアーサー・ウィリアム・プール主教によります」。キリスト教の博愛精神に基づいた教育を行っており、クリスマス礼拝など宗教的行事もある。
 訪問時、キャンパス内に足を踏み入れると、「こんにちは」と男子学生から元気な声で挨拶された。「本学は自由な雰囲気がありますが、学生の挨拶は外部の方からも高い評価を得ています」。キリスト教の愛と奉仕の精神が根付いている。
 キャンパスは、堺市の閑静な住宅地の中、豊かな緑と開放感につつまれた高台にある。入学式前後の桜は白眉である。本学では、「教員と学生が親しく、互いに学び合い、個性を大切にした『人間教育』を行っています」と学長の蔵田。
 プール学院大学は1879年に英国人女性宣教師、ミス・オクスラドによって始められた「永生女学校」(大阪市西区の外国人居留地)が淵源である。
 1890年、プール女学校に改組。1950年、プール学院短期大学(英文科)が開学。84年、秘書科、90年、専攻科英文専攻を設置。96年、プール学院大学が開学、プール学院短期大学を同大学短期大学部に名称を変更した。
 2007年、大学国際文化学部に子ども教育学科、08年、英語学科を増設。12年、大学国際文化学部の国際文化学科と英語学科を統合し、教養学科に改組。14年、大学に教育学部・教育学科を開設した。
 「既存の子ども教育学科を発展させて学部にしました。社会のニーズに応えるとともに、これまでの小学校、幼稚園・保育園の教員養成に加えて、中学高校の保健体育の教員を育てます」
 現在、2学部に535人の学生が学ぶ。学生の出身地は、大阪府が80%、和歌山県15%、奈良県、兵庫県合わせて5%。男女比は5対5だという。
 蔵田が大学を語る。「学院は、十数人の私塾でスタート、1人ひとり個を大切に子どもたちを育ててきました。この伝統と実績は引き継がれ、小さな大学ですが、学生の個に応じた丁寧な教育を進めています」
 学部の学び。教育学部(教育学科)は、子ども教育、健康・スポーツ教育、子ども保育、特別支援教育の4コースがある。教育学を専門的に学び、幼稚園教員、小学校、中学校・高等学校教員(保健体育)、特別支援学校教員、保育士をめざす。
 「体験型の授業で実践力のある人材を育て、グローバル社会に対応しうる教育従事者を育成します。卒業後の現場を見据えた視野の広い授業を通して、得意分野をもった魅力ある教育者の育成をめざしています」
 特別支援教育コースがあるのが特色だ。発達障害の児童生徒を支援する取り組みは2007年の文科省のGPに選定された。「4年間取り組み、その成果は学習支援センターが継承しています。発達障害のフォーラムを開催したところ定員の2倍もの応募がありました」
 国際文化学部(教養学科)は、国際、経済、公共、観光、ACE(英語特別)の5コース。実社会のさまざまな分野で活躍するための社会人基礎力を学び、リベラルアーツ教育を通して、グローバル社会で必要な幅広い知識と応用力を養う。
 「国際文化学部は海外研修や企業でのインターンシップなど、国内外を舞台に多彩なプログラムを用意しています。現場での経験から得た知識を生かして、グローバルな視野と行動力をもった人材を育てています」
 「ミャンマーや中国などでのフィールドワーク、官公庁や企業でのインターンシップ、外国人小学生への教育支援といった現場体験を通し、グローバルな学びに重点を置いています」
 教育力。専任教員によるチューター制度を導入。「1クラスは多くて約20人。学習面だけではなく、学生生活全般にわたって指導しています。何でも相談できる先生は、学生にとって心強い存在で、温かな交流が生まれています」 
 独自の単位認定制度がある。在学期間中に実施される英検、TOEIC、TOEFLのいずれか1つで、定める成績を修めた場合や、留学や海外研修を体験(留学期間によって単位数は異なる)すると、単位認定される。
 グローバル化。かねてより、「英語のプール」といわれ、留学や海外研修は活発で、世界へ出かける学生は毎年約50名。「語学学習はもちろん、さまざまなボランティア活動を通して現地の人と交流をし、異文化理解を体験するのが特色です」
 「地球がキャンパス」を掲げている。「グローバル化イコール欧米ではなく、ネパールや、韓国、ベトナム、フィリピンといった東アジアに対しても同じように交流を深めていきたい」
 就職力。現場での経験を重視した体験プログラムを実施。就職先は、地元が圧倒的。ANA、和歌山放送など企業や団体と連携したプログラムを展開。「和歌山放送とは、ラジオ番組を制作。ANAグループとは、関西国際空港や関連施設で授業やインターンシップなどを実施しています」
 教育学部開設に伴い、教職センターを設置した。「教員志望の学生を支援します。教員採用情報の提供とともに、教員採用試験対策の支援や面接の練習など、様ざまな視点から教員や教職を考え、これからの社会を担う子どもを育てる教師育成のためのサポートを行っています」
 地域貢献。堺市とは地域連携協定を締結。11月30日には、「思春期・青年期における発達障がいについて考える」フォーラムを堺市の後援で開催。「子供たちを対象にした『キッズ・イングリッシュ』や地元の高校と一緒に『スポーツ・キッズプログラム』などを展開しています」
 学生スポーツでは、今年度から女子硬式野球部と女子バレーボール部を強化指定クラブに。「人工芝グラウンドと体育館サブアリーナも完成。クラブ活動と学業の両立を目指しています」
 大学のこれから。「過去も、現在も、これからも学生1人ひとりの個性を活かし、学生に寄り添う教育に取り組んでいきたい」と前置きして、こう語った。
 「教育の質の充実を図り、特別教育支援などは地域の理解を得ながらいっそう力を入れたい。グローバル化を推進し、他の大学以上に取り組んできた地域貢献や社会貢献は今後とも拡充する。専門性も大事だが、本学の特色でもある精神性、心の面で優しく強い教養人を育てていきたい」
 最後を、こう締めくくった。「キリスト教主義に根付いた、愛と奉仕の精神を体現できる、弱者や困った人たちに目を向ける人間に育ってほしい」。冒頭の大学訪問時に挨拶された学生の笑顔と重なった。