特集・連載
大学は往く 新しい学園像を求めて
<111>植草学園大学
3分野(保育教育リハビリ)の専門家育成
少人数教育充実の施設 障害ある人にも優しく
「誠実・努力・謙譲」を建学の精神の具現化として校訓としている。植草学園大学(浦野俊則学長、千葉市若葉区)は、2008年に設立された発達教育学部と保健医療学部の2学部からなるフレッシュな大学。発達教育学部では子どもの保育と教育を総合的に学び、小学校、幼稚園、特別支援学校の教諭や保育士の資格を取得できる。保健医療学部では身体機能の障害や困難を改善したり回復したりして生活の質を向上させる医療専門職としての理学療法士を養成する。子どもの保育と教育、障害児・障害者への支援・社会環境整備、高齢者の保健医療などに焦点をあてた教育カリキュラムが特長だ。文部科学省の教育研究活性化設備整備事業に連続選定されるなど教育の質には定評がある。学生は、少人数教育、そして新しい校舎、広々と充実した演習施設などで学ぶ。「社会のニーズに応え、保育と教育・リハビリテーションについての専門家を育成していきたい」と語る学長に学園の歩み、現状と今後などを聞いた。
(文中敬称略)
建学の精神 誠実・努力・謙譲
最初に、前々から持ち続けて来た疑問を学長の浦野にぶつけた。教員養成の学部として教育学部は多いですが、発達を付けたのは、どうしてですか?
「教育や保育の現場では、障害や病気、困難性のある子ども、発達障害や不登校の子どもらに支援が必要で、しっかりとした対応が求められています。しかし、こうした対応は、先生の負担が大きく難しいのが現実です。こうした対応力を身に付けた教員を育てたい、子どもの教育や保育には発達が不可欠なのです」
植草学園は、1904年に、初代校長の植草竹子が千葉市院内町に「千葉和洋裁縫女学校」を創設したのが淵源である。1928年、県内初の洋裁科を開設。戦後の1948、千葉和洋裁縫女学校を植草文化服装学院に改称した。
72年、植草幼児教育専門学院と植草学園幼稚園を設立。76年、植草幼児教育専門学校に改称。77年、附属第二幼稚園を開設。79年、文化女子高等学校を設立、85年、植草学園文化女子高等学校に改称。
99年、植草学園短期大学(福祉学科・地域介護福祉専攻,児童障害福祉専攻)を開学。2001年、植草学園短期大学に専攻科児童障害福祉専攻を設置。03年、植草学園短期大学専攻科の児童障害福祉専攻を特別支援教育専攻に改称。
08年、4年制の植草学園大学は、発達教育学部発達支援教育学科,保健医療学部理学療法学科の2学部2学科で開学した。
現在、系列に植草学園短期大学、植草学園大学附属高等学校、植草学園大学附属弁天幼稚園、同美浜幼稚園、植草弁天保育園がある。
現在、2学部に742人の学生が学ぶ。男女比は、男子4割、女子6割、出身地は、千葉県を中心に近県がほとんど。保健医療学部には関東から東北地方の学生がいる。
学長の浦野が大学を語る。「発達につなげる子どもの保育と教育、リハビリ等による高齢者の生活の質の向上、障害者の支援、という3つを柱に開学しました。友人や先生方との人間的な交流と勉学を通じて、豊かな情操、他者への思いやりの心、幅広い教養、専門分野の知識と実践的な能力を身につけた学生の育成を目指しています」
学部の学び。発達教育学部(発達支援教育学科)は、子どもの発達と支援について広く学ぶ。「教育や保育の現場では、障害や困難性のある子どもへの対応など、1人ひとりの子どものニーズへの対応が求められています。経験豊かな先生方から、現場で必要とされる実践的で具体的な対応の仕方について学びます」
将来の希望に合わせた4つの専攻がある。①小学校教育専攻。小学校教諭一種免許状を取得し小学校の教員をめざす。小学校の教育に関わる豊富な教員が揃い、自信をもって指導ができる小学校教員を育てる。
「教育現場につながる学びを重視して、実践力を磨きます。発達障害のある児童の支援を学び、個々の発達に応じた指導力を高めます」
②特別支援教育専攻。特別支援学校教諭一種免許状を取得し特別支援学校の教員をめざす。同時に小学校教諭一種免許状を取得できる。
「必要なすべての障害の特徴と支援を学び、高い専門性と実践力、そして温かなハートをもった特別支援学校教員を育てます。実践体験と教育実習を積み上げ、無理なく実践力を養います」
③幼児・保育専攻。幼稚園教諭一種免許状と保育士資格を取得し幼稚園教員や保育士をめざす。乳幼児期の子どもの発達、教育・保育について、基本となる知識や考えと新たな視野をしっかり身につけ、幼稚園・保育所の運営や子育て支援についても理解をもった保育者を育てます」
④子ども発達専攻。一般企業、公務員、教育関連のNPO法人、障害児者のための福祉施設、不登校の児童等を支援する民間施設等で、その資質や能力を発揮できる学生を育てる。
「子どもはどのように発達していくのか、それぞれの発達段階において、どのように指導や支援を行っていけばよいのかなどを総合的に学びます」
保健医療学部(理学療法学科)は、理学療法士を養成する。急速に高齢化の進む中、病気によりからだに重い障害が残る人の数は増加。身体障害のリハビリテーションを専門とする理学療法士の必要性が高まっている。
病気やその他の要因によって、からだの動きに障害をきたした人に対し、障害の改善と身体能力の向上を図る治療技術(理学療法)を学ぶ。理学療法士は、治療技術の担い手であり、リハビリテーション医療における中心的な存在だ。
「理学療法士になるためには、人にやさしい心をもち、自ら厳しく学ぶことから始まります。からだのしくみや働き、発達や老化、病気や障害などを良く知り、治療、リハビリテーションを学びます。“身体だけでなく心の痛みにも寄り添うことのできる温かい理学療法士”をめざしています」
理学療法士国家試験に合格すると、理学療法士の資格が得られる。病院やクリニック、老人保健施設や訪問看護ステーション、特別支援学校、保健センター、自治体や民間の身体障害者福祉センターなど地域のさまざまな保健医療現場での活躍が期待されている。
きめ細かく就職支援
就職力。発達教育学部は、就職決定率は98%、専門職率は87%で、保健医療学部は、就職決定率は100%、専門職率は94%。「キャリア支援は、少人数制のゼミとキャリア支援課が連携して、学生をマンツーマンで指導しています」サークル活動は、この大学ならではのものが多い。「学生は、手話やピアヘルパーサークルなどに積極的に参加しています。発達教育学部では単位認定するなどボランティア活動に力を入れています」。学生全員に「ボランティア活動ハンドブック」を配布している。
地域貢献活動を強化
大学のこれから。「開学の際、3つの柱とした発達につなげる子どもの保育と教育、リハビリ等による高齢者の生活の質の向上、障害者の支援、を充実、深めていきたい。そして、地域の大学として地域貢献を強化したい。地元の若葉区とは高齢化社会への対応などを一緒にやっていきたい」こう付け加えた。「開学して6年、本学のめざす『障害のある人にもない人にも優しくできる力を養う』という学びは、高校生、保護者や高校の先生に浸透していない面もあるので、実績を積み重ね、植草学園大学の名前をもっともっと広めていきたい」。浦野は、大学のこれからを見つめるように語った。