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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<101>広島国際学院大学
 文理融合で人材を育成
 電機大学から総合大学に 地域貢献と国際化対応

 「教育は愛なり」が建学の精神で、「信和・協同・実践」が教育理念である。広島国際学院大学(佐々木健学長、広島市安芸区)は、1967年、広島電機大学として開学。99年に現代社会学部を設置して大学名を広島国際学院大学に改称して総合大学を目指す。最新鋭の施設・設備を備え、実験・実習が充実、文系も理系も学べる文理融合のカリキュラムで専門分野と幅広い教養を修得。地域に貢献できる人材育成と、学生の多様な知的好奇心に応えるべくグローバル化や情報力向上に力を注ぐ。不断なく大学改革を行い、2013年には、学部の改組と統合を行い、新たなスタートを切った。「学生の目線に合わせたきめ細かい丁寧な教育を行っています。基礎学力をしっかり身につけ、社会へ出て必要となる専門的応用能力を養います」と語る学長に学園の歩み、改革、これからを尋ねた。(文中敬称略)

建学の精神「教育は愛なり」

 広島国際学院大学は、1927年に鶴虎太郎が創設した広島高等予備校が淵源である。38年、広島電気学校を開設。戦後の1948年、広島電気学校普通科を広島電機高等学校(現・広島国際学院高等学校)に移行開設した。
 「創立者の鶴虎太郎は、経済的・身体的その他いろいろな理由で教育の機会を奪われた若者に対し、自分のもてるものを与え尽くそうという深い思いがありました。昭和40年に建立された創立者の胸像には、『愛は教育なり』という言葉が刻まれています」と学長の佐々木。
 1964年、広島電機学園短期大学自動車工業科を設置。67年、工学部(電気工学科、電子工学科)のみの単科の広島電機大学が開学。68年、工学部に機械工学科を、94年、情報工学科を設置した。
 99年に大学名を広島国際学院大学に改称、現代社会学部を設置。「開学以来、総合大学を目指してきました。語学を重視した国際コースを設け、中国地方の社会学の拠点にしようと現代社会学部を設置しました」
 2004年、工学部情報工学科を改組し、情報学部(情報工学科、情報デザイン学科)を設置。07年、情報学部を情報デザイン学部に改称、情報デザイン学科と統合した。
 2013年の学部学科の再編統合。工学部を改組し、食農バイオ・リサイクル学科と生産工学科に、情報学部と現代社会学部を統合・改組し情報文化学部に情報デザイン学科と現代社会学科を設置した。
 学長の佐々木が大学を語る。「教育理念は、自己を信じながらも和を求め、互いに助け合える感性を持ち、行動力のある人材を育成する、という意です。チャンスの多い大学で、文理融合で文系、理系双方の資格を取ることが出来ます。就職まで責任を持って指導しています」
 一連の改革について続けた。「アニメ、映像、商品デザインなどに取り組む情報デザイン学科や食農バイオ・リサイクル学科の設置は、時代の要請と学生のニーズに応えたものです」
 文理融合について。「それまでは広島電機大のイメージが強く女子は少なかったですが、情報デザインやバイオなどの設置で女子が増えました。文理融合の成果で、キャンパスの活性化にもつながりました」
 学部の学び。工学部は食農バイオ・リサイクル学科と生産工学科の2学科。工学的資質の形成に欠かせない基礎学力の構築に重点を置き、文系・理系に関係なく、「ものづくり」に欠かせない基礎学力を学ぶ。
 「産学連携プロジェクトや実践的な資格取得の学習を通じて、社会が求める社会人基礎力を培います。社会的ニーズの高いさまざまな分野で技術者としての道を切り拓くことができます」
 情報文化学部は、ITコミュニケーションについて学ぶ情報デザイン学科と社会の諸問題をみつけ、分析・解決へと導く現代社会学科の2学科。各学科にはそれぞれ3つのコースがある。
 「学生は幅広い分野から、それぞれの興味に応じた授業を選択することにより、段階的に専門的能力が養えるカリキュラムを組んでいます。また、キャンパスから地域へと飛び出して、さまざまな体験をベースに学べるのも大きな特徴です」

学び支える教育総合C

 学びを支えるのが総合教育センターで、専従教員を置く。「英語など語学力、読み書く文章力、コンピュータの基礎などとともに、教養科目などに加え学部共通科目を学び、コミュニケーション力など社会人基礎力を身に付けます」
 ものづくりセンターは、広島国際学院大学方式ともいえる独自のスタイルで、ものづくりを基本に地域とつながる工学教育を行っている。グループによる実体験型の授業や、産学官連携による実務教育を施す。
 「学生のトータルなものづくり能力(企画・運営・ビジネス等の能力)を育てます。学生運営のモデル企業を起こしたり、環境資源教育をめざしたキャンパス・リサイクルを行うなど、さまざまなカタチで地域貢献を行っています」
 客員教授のガッツ石松の特別講義がある。1年生を対象とする必修科目「初年次セミナーⅡ」の全学科合同セミナーとして昨年10月にもあった。「新しいことに挑戦し、チャンスをつかもう」をテーマに、講話・対談・質疑応答形式で行い、200人が受講した。

資格取得で就職力強化

 就職力。全学挙げて国家試験など資格取得に力を入れる。「資格取得では、教員らのTA(ティチャーアシスタント)や上級生のSA(ステュ―デントアシスタント)が現役学生を支援、就職率アップにつながります」
 キャリアデザイン集中講義も就職力を支える。「3年生の必須科目で、カリキュラムは、自己分析、職種・業界研究、ビジネスマナー、面接試験対策等多岐にわたります。企業の第一線で活躍する卒業生による講話、模擬筆記試験も実施。就職活動への意識向上とスキルアップがねらいです」
 地域・社会貢献では、地域のリサイクル資源を生かした「食農バイオ体験塾」がある。2月には、地域の方を対象とした「“もちから”をいっしょにつくろう!」という会を開いた。“もちから”とは、食農バイオリサイクル学科の2年生が考案し命名した、おからと米粉で作ったお菓子。
 「おからは地域の豆腐屋さんが豆腐製造時にでるリサイクル資源。地域の方たちにレシピを公開し、おからを利用して『もちから』をつくります。定員を超える参加者があり、反響の大きさに学生達も驚いていました」
 学長の佐々木自ら社会貢献活動に勤しむ。佐々木は、広島大学工学部工業化学卒でバイオリサイクル研究の第一人者。東電福島原発事故では、福島市の依頼を受け、バイオ技術を使った放射能汚染土壌の除染に取組み成果を上げた。
 “文武融合”で学生スポーツも盛んだ。アーチェリー部は、全日本学生アーチェリー個人選手権大会第3位、全日本室内アーチェリー選手権準優勝など目覚ましい成績を挙げている。硬式野球部は、広島六大学野球リーグ戦で常に優勝争いに絡む強豪チームで、全国大会出場経験もある。

チャレンジ精神を養う

 大学のこれから。「学生がイキイキできるような大学、地域の方々に期待してもらえる大学にしたい。そのためには、指示待ちではなく自分から積極的に行動するチャレンジ精神を養っていきたい。また、広島の企業の海外進出もめざましく、英語力強化に一層、力を注ぎたい」。佐々木は、地域に貢献できる大学、グローバル化に対応できる大学、最後に、この2つを強調した。