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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<89>人間総合科学大学
 真の幸福と健康を実現
 頑張る大学院 心・体・文化から人間理解

 実践的な社会貢献を実現するため、社会のニーズに柔軟かつ迅速に対応できる人材を育てる。人間総合科学大学(久住眞理学長、埼玉県蓮田市、久喜市)は、2000年に日本の私立大学では初めての「通信制専門大学」として開学した。04年、大学院(修士課程キ穀ハ信制)を設置、05年、通学制の健康栄養学科、11年、同じく通学制の保健医療学部を開設。次代の保健・医療を切り拓く「心身健康科学」を全学科共通科目として学習する。通信制では、開学当初からE―Learningを取り入れている。通学制の学部学科は、きめ細かな少人数教育で管理栄養士・看護師・保健師・理学療法士・義肢装具士などを養成する。「建学の精神は、こころ・からだ・文化から人間を総合的に理解し、自立と共生の心を育むことです。人間の真の幸福と健康の実現を目指しています」と語る学長に学園の歩み、改革、これからなどを尋ねた。(文中敬称略)

通信制専門大学で開学
通学制学部も充実

 キャンパスが、アート・ギャラリーのよう。数多くの絵画やオブジェを学内に展示。太陽を描いた作品が多い。モダンアートで著名な中島由夫の作品。「教育と芸術の融合が本学のテーマのひとつ。心の故郷である学園には、いつも太陽がある、という願いが込められています」と学長の久住が話す。
 人間総合科学大学は、1953年に前身の早稲田医療学園が東京都新宿区に設立した東京カイロプラティック学院が淵源である。72年、早稲田鍼灸専門学校を開学。93年、早稲田医療技術専門学校を埼玉県岩槻市に開学した。
 人間総合科学大学(人間科学部人間科学科)は、2000年に開学。04年、大学院人間総合科学研究科心身健康科学専攻(修士課程)を、05年、通学制の人間科学部健康栄養学科を埼玉県蓮田市に開設した。
 通信制で開学したのは?「専門学校ではライセンス教育を行ってきましたが、学生が卒業後に大学で学士を取得できれば誇りと自信につながります。そうした意味で通信課程の大学を創設しました」
 07年、大学院人間総合科学研究科心身健康科学専攻(博士課程)を、09年、大学院人間総合科学研究科健康栄養科学専攻(修士課程)を開設。11年、通学制の保健医療学部(看護学科、リハビリテーション学科)を開設。
 通信制の人間科学部人間科学科には、日本全国から約2500人の学生が在学、通学制の人間科学部健康栄養学科と保健医療学部には、770人の学生が学ぶ。
 現実社会と向き合う力
 学長の久住が大学を語る。「本学の学びの目的は、知識の量ではなく、学んだ『知識』を人が生きる上で必要な『知恵』として育てること、知識を生きる力の源泉にすることにあります。学修で得られるその総体を『Knowledge for well―being』と呼んでいます。この『よりよく生きるための知恵』こそ、現実の社会と向き合う力となるのです」
 現在、埼玉県・蓮田、埼玉県・岩槻(さいたま市岩槻区)、東京サテライト(秋葉原)の3キャンパスがある。蓮田キャンパスには、人間科学部人間科学科と健康栄養学科がある。
 岩槻キャンパスには、保健医療学部がある。姉妹校の早稲田医療技術専門学校も。東京サテライトは、主に人間科学部人間科学科のスクーリングや大学院の講義やTV会議・研究指導、公開講座などの場だ。
 各学部の学び。人間科学部人間科学科(通信制)。インターネットを利用した講義、単位認定試験を行う。スクーリングは同大、東京、大阪でも実施。「教育理念は、人間を『こころ・からだ・文化』の側面から科学的・学際的に探求し、人間の全体像を理解することです」
 これまでに約7000人以上の卒業生を輩出。学生の約7割は、看護師など医療職として就業しながら学び、学士(人間科学)を取得。文部科学省の学校基本調査では、全国の通信制大学の平均卒業率は約14%だが、同学科は約70%。教育の質の高さを誇る。
 人間科学部健康栄養学科は、管理栄養士を養成する。「人間の生活と『栄養・食』との関わりを科学的・統合的視点から追求し、現代の保健医療サービスに対応できる人材を育成します」
 平成24年の管理栄養士の国家試験の合格率は、受験者全員合格で合格率100%(全国平均は、管理栄養士養成課程新卒が91.6%、全受験生で49.3%)を達成した。
 保健医療学部看護学科。看護師国家試験に合格することで看護師の資格が取得できる。最も患者と関わることが多く、チーム医療の要となる看護師には、医療に関する幅広い知識と高いコミュニケーション力が求められている。
 「看護師には、多様な現代社会の中で高い能力が必要ですが、本学は特に心とからだの健康についての総合的な教育を行っているため、医療機関からも地域からも“期待している”との声を聞きます」
 同学部リハビリテーション学科。理学療法学専攻は高い国家試験合格率を誇っていた早稲田医療技術専門学校のノウハウを活かす。より高度な知識と技術を持ち、総合的に理解できる理学療法士の育成を目指している。
 「病院や福祉施設などで、運動療法や物理療法を用いて障害の軽減や機能の回復を図るのが理学療法士です。国家資格試験に合格する必要があります。病院のリハビリテーション部門が主な就職先です」
 リハビリテーション学科の義肢装具学専攻。国家資格の義肢装具士の受験資格が得られる、全国でも数少ない養成校。今後も高い需要が見込まれる義肢装具士。障害者のこころとからだの両面のサポートができる人材を育てる。
 「個々の障害に合わせて義手や義足、装具などを採寸・採型し、設計・製作する義肢装具士には、医学やリハビリテーションの知識だけでなく豊富な工学の知識も必要。本専攻を卒業後、国家試験に合格することで取得できます」

オリジナル教科書使う

 同大の特長は、オリジナル教科書ときめ細かい指導。教科書は基本的に、教員と専門スタッフが書き下ろしたもの。初学者でもわかりやすく、読みやすく、学びやすい。「人間科学概論」、「生命科学概論」、「行動科学概論」などがそれだ。
 「(通学制の学部では)新入生は、2日間のフレッシュマンキャンプがあり、学生同士、教員との親睦を図ります。また、入学すると同時に学生一人ひとりに担任教員を付け、マンツーマンで学習指導しています」
 大学院の充実も、この規模の大学では白眉だ。「医療の現場で問題解決するドクター資格が必要と考えました。大学院では『こころ』と『からだ』の互いの関係性から人々の健康を考える心身健康科学という新しい学問を提唱しています」
 地域貢献も特長がある。「さいたま市健康づくり公開講座」は、食と運動、ストレスと健康などをテーマに同大教員が講演。「こども大学」は、県内の子ども(小学校4~6年生)に学びの機会を提供。同大の文化祭に子どもを招いた。

資格取得で就職順調

 就職はどうですか?「看護師の資格は、卒業時には、引く手あまたです。管理栄養士も食と健康が注目されているため社会から求められています。理学療法学専攻、義肢装具学専攻は専門学校時代の高い就職率をめざしています。来年度に卒業生を送り出す保健医療学部は期待しています」
 大学のこれから。「時代が要請する学生を生き生きと育てていきたい。ひとつは、ライセンス教育の徹底。左手にライセンス、右手に人間の理解力を持った学生を育成したい。また、海外の提携校との交流を深め、留学生を増やすなどグローバルな教育を展開したい」
 最後に、「巡り合った学生をしっかりした大人に育てたい。学生には自分の人生を切り拓く、自立と共生を身につけさせたい」。こう言って、久住は目を輝かせた。