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特集・連載

大学は往く 新しい学園像を求めて

<46>目白大学
  キャリアデザインに傾注
  新宿と岩槻  2キャンパスで系統別教育を展開

 「育てて送り出す大学の実現」が教育の基本方針である。目白大学(佐藤弘毅学長、東京都新宿区、埼玉県さいたま市岩槻区)は、「総合・文系の新宿」と「健康・医療系の岩槻」の二つのキャンパスで系統別教育を展開する。新宿キャンパスは社会から人間を見つめる学びを、岩槻キャンパスは健康・医療分野から人間の支え方を学ぶ。教職員が結束して学生と共に歩みながら指導する。学生もまた、大学の校風と伝統づくりに自覚的・積極的に参加する。豊かな緑に囲まれたキャンパスで、一人ひとりの個性を大切にした少人数教育、学生と教員の距離が近い学習環境、他大学に先駆けて取り組んだキャリア教育が特長だ。2014年、創立20周年を迎える。開学から18年という短期間に6学部16学科、大学院7研究科12専攻の総合大学に発展した。次の20年は「質の高い教育の進化をめざす」という学長に、大学のこれまでとこれからを聞いた。(文中敬称略)

創立20周年総合大学に
少人数教育で個性伸す

 目白大学は、創立者の佐藤重遠が1923年に東京都新宿区に創立した研心学園が淵源だ。佐藤が定めた建学の精神『主・師・親』は、「国家・社会への貢献、勉学へのひたむきな情熱、自分を支えてくれる人々への感謝」を表し、その心はいまも脈々と流れている。
 1963年、目白学園女子短期大学を同地に開設。目白大学は、1994年、埼玉県岩槻市(現さいたま市岩槻区)に人文学部の1学部でスタートした。その後、2000年、本部を東京都新宿区に移し、人間社会学部を設置した。
02年、経営学部を設置。05年、新宿キャンパスに外国語学部、岩槻キャンパスに保健医療学部を設置。06年、岩槻に看護学部を設置。07年、人間社会学部を改組、人間学部と社会学部を設置した。現在、6学部に約6300人の学生が学ぶ。
 学長の佐藤が大学を語る。「教育研究の理念として、①個性的な自己開発と主体的・自律的な自己確立、②真理の探究と創造性、③ヒューマニズムによる平和と福祉の実現―の三つを掲げ、社会が求める人材を育ててきました」
 二つのキャンパスでの系統別教育の成果は?「それぞれのキャンパスの立ち位置がわかりやすく、明確になったことで、学生にも好評です。また、受験生の数も系統別教育になってから順調に推移しています」
05年の保健医療学部、06年の看護学部設置について。「新しい時代のニーズに応えるのがねらい。健康、医療、福祉の分野で活躍できる人材を育てようと設置」。09年には、埼玉県和光市の国立埼玉病院内に第3キャンパスを設け、大学院看護学研究科を設置した。
 11年、第3キャンパスにメディカルスタッフ研修センターを開設。「近年、安全で質の高い医療を求める声が高まる中、スキルアップを目指す看護職の方を応援し、看護ケアの広がりと質の向上に貢献するのが目的。脳卒中リハビリテーション看護とがん性疼痛看護の教育課程があります」
教育について。まず、少人数教育をあげた。「学科ごとに30~50人で構成する少人数のクラス制を採用。目が行き届き、教員と学生の密なネットワークをつくっています。教員と学生の距離が近い本学だからできることです」
 学部学科の垣根が低い。「学生本人の専門性を損なわない範囲で、複数の学部学科の科目が取れるよう、開放科目を設けています。総合大学に成長した証しでもあるし、伝統校ではできないことです」
早くから、学生の社会的自立に取り組んできた。04年から「キャリアデザイン」が必修科目。「基礎学力の低下や、就労や職業観が欠けているといわれるなか、いち早く必修にして、人生をイメージできるよう、学生を指導してきました」
 キャリアデザインの科目は、年間30コマに及ぶ。「キャリア形成を第一の目的に実施しています。学部・学科ごとにカスタマイズされ、学部・学科の特性に最適なものとなっています」

キャリア研修を開始

 キャリア教育では昨年度から、「キャリア研修」を開始した。1年次から春、夏休みに実施。「学生時代から常に社会人としての接点を増やし、現実の社会を体験する場です。単位化し、研修後は発表することが義務付けられています」
 キャリアポートフォリオも始めた。「大学入学前、大学入学後の学生自らの活動内容を記録、自己の振り返りを行っています。クラス担任は、キャリアポートフォリオを通じて的確なキャリアアドバイスをしています」
初年次教育では、来年度からは「ベーシックセミナー」を必修化する。「主体的な学びの場である大学に早く馴染ませるのが狙い。入学前教育、フレッシュマンセミナーなどを実施してきましたが、こんどは教育課程の中で行います」
 研究面にも力を入れる。「科研費など公的な資金を獲得するのを後押ししようと、学内にも競争原理を導入して、特別研究費を出す制度をつくりました。専門分野に限らず、学部学科の枠を超えた研究にも光が当たるようにしています」
 大学行事などに積極的に参加する学生。「『メジ☆スタ』は、目白大学入試広報学生スタッフの略称で、受験生のサポートとして学生自らが組織した団体です。02年に少数で発足しましたが、今年度の登録メンバーは150人。オープンキャンパスなどで、学生目線による等身大の目白大学を伝える重要な役割を担っています。自分たちで大学をつくるんだという学生の気概は誇りです」
 なぜ、そんなに積極的なのか?「大学と一体感を持つこと、自分の居場所を確認するのが目的かもしれない。自分たちも楽しんじゃおうという若者気質もうかがえますが、伝統的な大規模大学にはない本学の特長です」

SPISチャレンジ制

 大学側も学生を支援する。SPISチャレンジ制度。SPISとは「Students Project Incentive Scholarship」の略。好奇心旺盛な学生にそれぞれが抱いている夢の実現にチャレンジしてもらおうと、資金の一部を大学が支給する。
 「応募企画の内容は単なる趣味的なものに終始するのではなく、社会性があり、地域社会に貢献できるものであることが条件。独自性、社会性、計画性、熱意、教育的効果などの点から審査、上限50万円までの奨励金を支給します」
 地域貢献も目白大学らしさに満ちている。子ども学科の学生たちは、毎年、佐藤重遠記念講堂で演劇「まみむめめじろ かきくけこども」を開催。近隣の幼稚園・保育所の子どもらを招く。学生は脚本から音楽、照明まで自分たちで行う。
 地域社会学科の学生らは、地元、中井の地域イベント「染の小道」にサポーターとして参加。新宿キャンパスのある落合・中井は「染め物の街」。学生たちは、伝統産業を地域活性化につなげようと、染色業者、商店主らと汗を流す。
 「大学のこれから」を聞いた。その前に学園を取り巻く状況について。「少子化、大学全入、教育ニーズの多様化、高度化、学校設置に対する国の規制緩和の進行など、いま、私立大学は未曽有の競争的環境に晒されています」

質の高い教育を進化

 どう歩むのか?「クオリティーエデュケーション(質の高い教育)を進化させたい。若い大学として時代のニーズに対応し、量的拡大、新分野への進出、キャンパス・施設の整備などに成果をあげました。これからは、教育力の強化と学習効果の向上、キャリア教育の一層の充実、研究支援などに力を傾注したい」
佐藤の話の最後は、建学の精神に戻った。「建学の精神『主・師・親』の心を堅持しながら、これから直面する厳しい時代をしっかりと生き抜く意欲と能力を備えることができる学生を育てていきたい」