特集・連載
大学は往く 新しい学園像を求めて
<36>京都ノートルダム女子大学
キャリア育成を強く支援
初年次教育も高い評価 グローバル人材を育成
「徳と知」が建学の精神で、社会と国際社会の平和に貢献できる女性の育成をめざす。京都ノートルダム女子大学(藪内 稔学長、京都市左京区下鴨)は、学習・研究・資格取得・留学・就職から学生生活まできめ細く学生をサポートする少人数教育が特長だ。創立50周年を迎えた2011年、教育・研究環境を整えるため、同記念事業として「北山キャンパス総合整備計画」を進める。京都工芸繊維大学の敷地内に、校舎「ノートルダム館」を建設。国立大学の敷地内に私立大学の建物が設置されるのは全国でも初めて。北山キャンパス内には、学生寮、同窓会施設、キャンパスミニストリー室などを備えた複合教育施設「キャロライン館」を建設。新たな時代を迎えるなか、「これからも、国際力と伝統力を身につけた、グローバルに活躍できる自立した女性を育てたい」という学長に、初年次教育、キャリア教育やグローバル化、そして、大学のこれからなどを尋ねた。
(文中敬称略)
創立50周年 キャンパス整備、着々
京都ノートルダム女子大学の淵源は、1833年創立のマザーテレジア・ゲルハルディンガーによるノートルダム教育修道女会。47年、彼女と4人のシスターが渡米、貧しい移民の子どもたちの教育に携わった。
1948年、米国の同修道女会から4人のシスターが京都に派遣され、52年、ノートルダム女学院中学、53年、同高校、54年、同小学校を設立。61年、ノートルダム女子大学(文学部英語英文学科)を創立した。
63年、生活文化学科を開設。99年、京都ノートルダム女子大学と改称。00年文学部を人間文化学部に名称変更、人間文化学科、生活福祉文化学科、生涯発達心理学科を開設。02年、大学院を開設。05年、心理学部、07年、生活福祉文化学部を開設。
現在、人間文化学部、生活福祉文化学部、心理学部の3学部に1450人の学生が学ぶ。学長の藪内が大学を語る。
「一番の魅力は少人数教育。学生と教員、職員との距離が近く、各学生の個性を理解した上で、4年間を通してそれぞれの成長を支えます。初年次教育、キャリア教育、そして、国際教育にも力を入れています」
「受付にいる守衛さんは、学生一人ひとりと挨拶を交わしています。学生全員の顔と名前がわかっています」。これも少人数教育を象徴している。女子教員の比率が51.4%と高く、全国の大学で10位。「女性の活躍する時代。学生にも刺激になります」
初年次教育。大手予備校の調査でも〈全学生に一定水準の初年次教育を担保するため、全クラスの初年次ゼミを同じ曜日・時限に設定し、終了後、毎回全教員が集まり反省と次回のすり合わせを行っている〉と評価が高かった。
「初年次教育では全クラスが大学の学びを円滑に進めるための基礎固めをし、共通教育では広い視野や教養、柔軟な思考力を育成。その上で、各学部・学科の専門的な学びを深めています」
キャリア教育について。「社会的・職業的自立を図るための力を培うには、第一に、確固とした本学独自の教育理念とその認識の共有が根底になくてはいけません。学生一人ひとりのキャリア育成の支援を効果的に行う必要があります」
具体的には?「就業力を自己開発する実践キャリア教育です。ライフプランニングから始まる段階的なカリキュラムによって自覚的にキャリア形成の過程を踏むことができます」。三つのアプローチからなる。
アプローチ1の「キャリア形成カリキュラム」は、キャリア形成基礎、キャリア形成専門、キャリア形成実践、キャリア形成発展の四科目で構成。「女性の生き方と可能性を学び、就業への態度や知識を身につけます」
アプローチ2の「プロジェクト型実践授業」では、企業とのコラボレーションなどが行える多様なプロジェクトを学生自らが企画。「社会人基礎力を身につけるとともに、就業意欲や自信、社会人としての心構えを身につけます」
アプローチ3の「キャリア自己評価システム」は、学生の履修実績や成績、活動記録を集積して自己のキャリア形成を可視化。「成果を自己評価するとともにキャリアアドバイザーの助言を受けながら就職活動やキャリア形成を行います」
同大の「就業力を自己開発する実践キャリア教育」は平成22年度文科省の就業力育成支援事業に採択された。同年にキャリアセンターを設置。「卒業生の力も活用させてもらいながら就業力アップに力を注ぎたい」
就職決定率(2011年三月卒業生)は92.4%。「厳しい社会情勢が続いていますが、本学の卒業生は学部・学科で身につけた専門性を活かしながら、さまざまな分野で活躍して高い評価を受けています」
国際教育。「どの専門分野を選んでも、少人数のクラスでネイティヴの先生からリスニング&スピーキング、リーディング&ライティングの技能を徹底して学ぶことによって、英語のコミュニケーション能力を高めています」
海外研修や留学の機会は充実している。「協定を結ぶ英国、豪州、カナダ、米国の大学へ留学するセメスター(約6ヶ月)認定留学制度や米国姉妹大学留学制度、特定目的海外研修など豊富で、他の大学の追随を許しません」
さて、創立50周年の事業テーマは「徳と知50年 世界へ 未来へ」。「建学の精神を基に、グローバル化に対応し世界で活躍できる人材、時代の変化に対応し未来に向かって羽ばたける人材の育成を目指すことを表現しました」
北山キャンパス総合整備計画など、高度なレベルにおいて教育と研究ができる機関・施設の充実を図る。「さらに、開かれた大学として、他大学や地域社会、京都の伝統産業との交流にも積極的に取り組みたい」
国立大敷地に校舎建設
京都工芸繊維大学の敷地内に建設された3階建てのノートルダム館では、4月から一部授業を実施。「京都工芸繊維大とは包括協定を締結。キャンパスが近いという地の利を活かした連携・協力を促進したい。学生・教職員の交流や教育・研究の充実等も期待しています」4階建てのキャロライン館は、学生寮、同窓会施設、キャンパスミニストリー室などを備える。「学生寮は、キャンパス内にあるのでセキュリティも万全。通学のための時間や交通費も不要。個室と二人部屋があり、先輩や友達とのコミュニケーションを大切にしました」
社会貢献。「建学の精神に基づき大学が有する資源、特に研究や教育の成果を社会に還元するのが目標。教育・研究における成果を公開講座など大学がもつ人的・物的資源を社会に開放することで、地域に開かれた大学を目指しています。
京都府から「ひきこもり支援情報ポータルサイトにおけるインターネット相談事業」を07年から委託。「引きこもりの当事者およびその家族等の相談に、大学院心理学研究科臨床心理学専攻の教員および学生や研究生が参加しています」
藪内は最後にこう話した。「これからも『徳と知』の教育を鮮明にして歩んでいきたい。三学部の専門性を生かし、本学にない特色を持つ大学と連携、更なる50年に向けカトリック精神を基礎とした、豊かな人間性を持つ自立した学生を育てていきたい」