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学園草創期編

学園草創期編

学園草創期編では、各大学の草創期に想いを馳せてみましょう。創立者の偉大な意志、建学の精神に至るまでの想いのほかに、知る機会の少ないエピソードを募りました。創立者の横顔から、今ある大学の横顔を連ねてみると、これまで知らなかった学び舎の奥深さが見えてくるかもしれません。

東京家政大学

渡辺辰五郎と裁縫技術

 学校法人渡辺学園(東京家政大学)校祖・渡辺辰五郎は裁縫に関して「雛形尺」「袖形」「褄形」を考案した。「雛形尺」は鯨尺一尺(約38センチ)を三寸五分(約13.2度センチ)に縮尺したもので、半紙1枚の長さが鯨尺二尺となる。これは半紙を縦2枚に切ってつなげ、その幅を反物幅と仮定して一つ身、3枚で三つ身、6枚で本裁大人物1枚を裁つ縮尺で、極めて経済的配慮により教育的効果を上げた。渡辺式裁縫の大きな特徴でもある。当時、辰五郎が自宅裏の藪から竹を切り出し、ヤスリで目を入れ、くに夫人がこれに墨を入れて無料で生徒に配り、授業に使用した。この雛形尺は、後の度量衡制定の際、私製品としてはただ一つ例外的に認められた。
 「袖形」は袖の振りの袖口側底の丸みを作る時、袖形の丸みに沿って小針で縫えば、容易に時間をかけずに出来上がるものである。袖の袂の丸みと褄の形の作り方に、誰もがあまり苦労せずに美的に仕上げるために考案された。「褄形」も同様である。