日本私立大学協会創立70周年記念事業
国際シンポジウム
日本私立大学協会創立70周年記念「国際シンポジウム」は、12月2日午前10時から東京・市ヶ谷のアルカディア市ヶ谷で行われた。加盟大学から多くの関係者が参加した。
森田嘉一日本私立大学協会副会長・国際交流委員会担当理事(京都外国語大学理事長・総長)が挨拶の中で「本協会の長い国際交流事業の歴史で、初めて国際シンポジウムを開催します。若者が新しい枠組みを構築することで、恒久平和に根差す新たな世界を切り開いていくことを期待しています」と述べ、最後に去る10月13日に崩御されたタイのプミポン国王に哀悼の意を表した。
来賓紹介のあと、基調講演は、千野境子産経新聞客員論説委員が「東アジアの中の日本とASEAN」をテーマに行った。
千野氏は、2016年の国際情勢を振り返ったうえで、「日本とASEANをめぐる現況は相対的に安定しているが、最大の不安要因は台頭する中国だ。ASEANはEUと違って言語、宗教、文化、経済力など多様性が特徴。米国の新しいアジア太平洋政策と日本の役割を考えると、日・ASEAN関係はますます重要になる。政治経済だけでなく重層的な協調・交流が求められている」と講演した。
学生セッション「量から質へ~1―6―1留学プログラム」では、ASPIREの学生の発表とディスカッションが行われた。
ASPIREは、国際連合アカデミック・インパクトを母体とする世界的な学生組織。ASPIREジャパン(代表=桜美林大学4年・田代純一さん)は、桜美林大学、南山大学、麗澤大学、創価大学、東京国際大学、吉備国際大学等の学生が参加、世界的な諸課題の調査と学習などを行っている。
このシンポジウムに向けて調査と議論を重ね、新たな留学プログラムを考案し、英語の発表を行った。
現行の短期留学プログラムの分析結果を解説。調査の結果、留学を経験した多くの学生は満足しているが、「留学時にあれをやっておけばよかった」と後悔もしているという。これを乗り越える留学プログラムとして考案したのが「1―6―1留学プログラム」。次の3ステップからなる。
①後悔の1か月―1か月の留学を体験し、困難に挑戦するも失敗したり、挑戦できなかったことに対して後悔を抱きつつ帰国する
②内省の6か月―①「後悔の1か月」を振り返り、自身の経験や後悔をまとめ整理する。③「再挑戦の1か月」に向け学習と準備を継続する。
③「再挑戦の1か月」―内省を踏まえ「後悔の1か月」で失敗した事、出来なかった事に再び挑む。学習を経て「後悔の1か月」で気づかなかった事を認識できるようになる。淡江大学(台湾)副学長のタイ・ワンチン氏は、「留学への積極的な姿勢に感銘を受けた」とし、学生たちを称えた。
解説のあと、麗澤大学学長の中山 理氏を司会にASPIREの学生たちとパネルディスカッション。学生たちの留学目的は多様だが、帰国後に学習意欲が向上、目標設定、固定概念が取り払われた等の感想を持ち、自分のアイデンティティが再構築されたとの答えもあった。
中山氏は「具体的な経験を抽象的に捉え直し、また新しい場面で試すことができるこのプログラムは非常に画期的だと思う」と締めくくった。
昼食後のセッション2では、「国際交流の現状と10年後の展望」と題してディスカッションを行った。司会は同協会常務理事・ASEAN特別委員会委員長、大阪商業大学理事長・学長の谷岡一郎氏、司会補助に公江茂同委員会委員、武庫川女子大学事務局長。発表者にモンゴル私立大学協会会長のサンジベゲズ・トムルオチル氏、韓国大学法人協議会会長のリ・ダイスン氏、タイ私立大学協会会長のサオワニー・タイルンロート氏、高等教育国際合作基金会(台湾)会長のフエイ・ジェン・ジェニー・スー氏、ダルマプルサダ大学(インドネシア)学長のダダン・ソリヒン氏、ハノイ大学(ベトナム)学長のグエン・ディン・ルアン氏が登壇した。
各国発表者は、各国の歴史や高等教育の現状、ASEANにおける今後(特に2025年)のメガトレンドに向けた取り組みの概観を述べた。
実践大学(台湾)国際部長のトニー・クオ氏は、「この発表で多くの国際交流機会があることに励まされた。今後どうやって協力していくのか。これが新しい協力関係の始まり」と述べた。
谷岡氏がASPIREの学生たちの1―6―1システムの提案をどう考えるか、と聞くと、素晴らしい発表だったと述べたうえで、台湾のスー氏は「留学に多様な文化を作ることが必要です。もっと気軽に留学できるようになるとよい」と述べた。韓国のリ氏は、「留学生を受け入れ、送り出すのみで、学生のために何をするか、という観点がこれまでなかった。コンソーシアムを作って実験的にできるのではないか」と提案した。
トムルオチル氏は今後モンゴルで必要な人材について「主に理工系の専門人材です。課題もあるが、そうした国際交流ができるとよい」、タイのタイルンロート氏も「今後、アジアの経済や文化をけん引するにしても、一国でできるわけではないです」、ベトナムのルアン氏は「ベトナムをはじめ世界的にグローバル人材の育成がトレンド。ベトナムは若者数に比べて高等教育機関数が不足していることが課題」とそれぞれコメントした。
会場を移しての国際交流懇親会では、樹徳科技大学(台湾)副学長のアラン・ダーゴ・イェイン氏が「各国がビジョンを共有し、教育者として協力していけると分かりました」と述べ乾杯、ASPIREの学生、海外関係者、加盟大学参加者は熱心に意見交換した。