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研究成果等の刊行

No.35(2009.04)

「「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」をめぐって」

講演者:鈴木 敏之、金子 元久、山田 礼子

はじめに

私学高等教育研究所主幹 瀧澤 博三

 さる3月25日に中央教育審議会大学分科会の制度・教育部会が「学士課程教育の構築に向けて(審議のまとめ)」を公表しました。未だ最終答申には至ってない段階でしたが、大学関係者の関心が非常に高いことから、第36回の公開研究会はこれをテーマとして取り上げました。
 これまで大学改革の議論は大学の制度的な問題が主になっていましたが、平成17年の中教審答申「我が国の高等教育の将来像」はこの流れを変え、教育の質の時代への転換を感じさせるものでした。その後17年9月には中教審から「新しい時代の大学院教育」の答申が出され、更に「学士課程教育のあり方」の審議が始められたことによって、教育の質の論議はいよいよ本格化した観があります。「審議のまとめ」でも、学士課程教育に対する問題意識として、高等教育のグローバル化に対応するためには、我が国の「学士」の水準を維持・向上させるために、教育の中身の充実を図らなければならないこと、全入時代を迎え教育の質保証システムの再構築と「出口」の管理が社会から強く求められていることなどを挙げています。
 このように教育の質への関心が高まってきた一方で、これまで高等教育の多様化・個性化を目標として自由化・規制緩和の政策が進められてきましたが、その結果については、自由と競争が質の向上をもたらしたという実感は少なく、むしろ混乱と無秩序による弊害を懸念する声が多かったのではないでしょうか。こうした時期に始められた学士課程教育のあり方に関する審議は、大学関係者の強い関心と期待を集めていたように思います。
 そこで第36回公開研究会では、この「審議のまとめ」をめぐって次の3人の講師からお話を伺いました。まず鈴木敏之氏(文部科学省高等教育局 高等教育政策室長)、次いで金子元久氏(東京大学大学院 教育学研究科長)、次に山田礼子氏(同志社大学社会学部教授 教育開発センター所長)です。鈴木室長はこの審議の担当部局の責任者として深く関わってきた方です。金子先生は申すまでもなく高等教育研究の分野では第一人者です。山田先生は初年次教育など学士課程教育の諸問題、アメリカをはじめ諸外国の高等教育事情などの研究で優れた業績を挙げておられます。
 この「審議のまとめ」は平成20年12月に最終答申となりましたが、その内容は各大学にも重要な多くの課題を投げかけており、これからの大学の教学運営に大きな影響を与えるものと思います。この冊子はこの公開研究会の記録ですが、学内でのご議論に参考として役立てていただければ幸いです。

  1. 鈴木 敏之氏(文部科学省高等教育局 高等教育政策室長)
    【講演】「中教審提言のポイントと今後の対応」(PDF形式)
  2. 金子 元久氏(東京大学大学院 教育学研究科長)
    【講演】「学士課程教育の問題点と政府・大学の役割」(PDF形式)
  3. 山田 礼子氏(同志社大学社会学部教授 教育開発センター所長)
    【講演】「学士課程教育充実への取り組み」(PDF形式)
  4. 瀧澤 博三
    【コメント】「学士課程教育の構築に向けて」をめぐって(HTML形式)

*** 「関連資料」部分等は割愛しました。 ***