特集・連載
寄付募集戦略
〈下〉私立大学ウェブサイトにおける寄付募集動向
平成24年2月中旬から下旬にかけて、全国の私立大学のウェブサイトにおける寄付募集の実態調査をした。
対象は、募集停止校、大学院大学、通信制のみの大学等を除く、全国の私立大学(569校)とし、対象となった各大学の公式ウェブサイト(当該大学を設置する学校法人ウェブサイトを含む)を実際に閲覧し、該当項目について確認するという手法で調査をおこなった。
本稿では、その調査結果の概要を紹介する。
なお、本調査終了後に各大学においてウェブページの更新等が行われているため、本調査結果と現状とは異なることを付言しておく。
寄付案内のページがある大学は4割以下
大学(または学校法人)のウェブサイトに寄付募集を案内するページ(以下、「寄付ページ」という)や記述があった大学は213校、全体の37%であった。
そのうち、産学連携の一環としての奨学寄付金(主に企業を対象)の募集案内のみの大学は15校、周年事業に係る寄付募集のみの大学は、40校であった。
寄付ページの内容では、数行のお願いと担当部署への連絡先のみという大学があった。しかし、一方で、別サイトを設け、寄付方法や税制について丁寧な説明を掲載している例もあり、大学によって大きく異なっていた。
参考までに、国立大学のウェブサイトについても寄付ページの有無を同様に調査したところ、大学院大学を除く82校のうち、72校(88%)で掲載があり、国立大学の方がウェブサイトを活用した寄付募集に積極的であることがうかがえる。
寄付ページへのアクセスのしやすさ
大学のトップページから周年事業特設ページを含む寄付ページに直接アクセスできる大学は、88校であり、寄付ページがある大学の約4割であった。
訪問者別のメニューとして「卒業生の方へ」などの、卒業生向けのメニューページは482校(全体の85%)にのぼり、ほとんどの大学が卒業生メニューページを設けていた。しかし、この卒業生メニューページから寄付ページ(周年事業特設ページを含む)に直接アクセスできる大学は64校(全体の11%)だった。これは、寄付ページのある大学の3割に相当するが、卒業生メニューページの設置大学数と比べると、明らかに少ない。
なお、トップページからも卒業生メニューページからも直接アクセスできる大学は35校にとどまった。
また、大学ウェブサイト上ではなく、別に開設されている学校法人ウェブサイトからしか寄付ページにアクセスできないという大学は42校あり、寄付ページがあっても、容易にアクセスできる大学は少ないといえる。
様々な形の寄付
信託銀行等と提携した「遺贈」による寄付の案内を掲載している大学は57校(全体の10%)あり、寄付ページのある大学の3割近くがこの仕組みを導入していた。
このほか、サポーター制度や後援制度といった形で継続的な寄付の仕組みを導入している大学もいくつか見受けられた。
利便性への配慮
寄付者の利便性への配慮については、ATMからの振込、インターネットからの支払いへの対応に着目した。
寄付者の特定が困難になるなどの理由から、寄付の振込を金融機関の窓口に限定している大学も多く見られたが、ATMからの振込にも対応している旨が明記されている大学は20校あった。
また、クレジットカードなどにより、インターネット上から直接寄付出来る大学は32校であった。
利便性への配慮の例では、これ以外に、特定の銀行の本支店からの振込手数料は無料とする、分納が可能、自動振替に対応するなどのケースが見受けられた。
地域差は鮮明
地域別の傾向を見てみると、東京を含む南関東では、50%の大学で寄付ページを掲載している一方、北関東や中国・四国は、いずれも14%と、かなり低い結果となった。
30%を超えた地域は、南関東の他に東海、九州、北陸、近畿、東北の四つである。東北については、大学の震災復興や被災学生への支援のものが目立った。
ネットから直接寄付できる仕組みについては、南関東と近畿で10%超の大学が対応しているものの、東海と九州が2%のほかは、ほとんどの地域で0%となり、地域による対応状況の違いがより顕著にあらわれた。
現状と今後の可能性
今回の調査では、私立大学のウェブサイトにおける寄付募集が全国的にはあまり進んでいないという現状が明らかになった。
寄付ページがない大学でも、寄付募集自体は行っている場合が多いと思われるが、寄付をする側にとっては、直接問い合わせるか、手元に寄付の案内等が届かない限り募集しているかどうかさえも分からない。
コストを抑えつつ、寄付を募集していることを広くアナウンスするためにも、ウェブサイトの活用は効果的である。さらに、振込や申込の手間を軽減し、寄付者の利便性を向上するという面でも有用であり、寄付者の拡大や継続的な寄付へつながる可能性もある。
今後ウェブサイトの積極的活用により寄付募集が一層活性化することを期待したい。
(おわり)